ネットバンキング不正送金の被害が福井県で増加 金融機関を装いフィッシング…福井銀行の偽メールも

福井銀行のホームページに掲載された偽メールのサンプル

 インターネット上で振り込みができる「ネットバンキング」の口座から不正に送金される被害が福井県内で増加している。福井県警によると、今年1~7月の被害は9件で計540万2千円となり、昨年1年間の発生件数を既に上回った。9件は全て金融機関を装うメールでIDやパスワードを抜き取る「フィッシング」の手口。5月には福井銀行をかたるフィッシング詐欺メールが初めて確認されており、県警は「被害急増の恐れがある」と警戒を強めている。

 県警サイバー犯罪対策課によると、県内のネットバンキング不正送金被害は、2022年が4件計625万円、21年が1件9万円で、今年は今後も大幅に増加する恐れがある。

 5月には40代男性が約290万円をだまし取られた。ネット銀行をかたる詐欺メールから本物に酷似した偽のログインサイトに誘導され、口座番号やパスワードを入力させられた。その日のうちに不正にアクセスされ、預金が別の口座に送金されていた。

 あの手この手で手法を変えてくるフィッシング詐欺。5月に福井銀行をかたった「【重要・緊急】福井銀行入金制限のお知らせ」という件名の詐欺メールが初確認された。実害はまだないが、県警は「詐欺の対象が地方銀行にまで広がっている」と警戒。犯人が送りつけたメールに添付された偽サイトのURLを開けないようにするブロッキング対策を講じているが、犯人側は違うURLを使ってくる可能性も高く、抜本的な対策には至らないのが実情だ。

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 ネットバンキングでの不正送金事件は全国的に増えている。昨年1年間の被害件数は前年に比べ552件増の1136件、被害額は6億9950万円増の15億1950万円に上った。いずれも3年ぶりの増加で、被害のほとんどはフィッシングの手口だった。

 今年に入っても増加傾向は変わらない。監視団体のフィッシング対策協議会(東京)の調べでは、フィッシング報告件数は1月から右肩上がりで、5月は前月比約22%増の11万3789件。昨年7月の10万7948件を超えて月別で過去最多となった。協議会はフィッシング詐欺の認知度が向上し、簡単に偽サイトを作成できるツールが売買されていることが要因とみている。金融機関をかたる傾向は続いており、5月に認知した新たな事業者11件のうち、8件が福井銀行を含む金融機関だった。

 協議会は被害防止策として▽メールのリンクは開かず、公式アプリなどを使って正しいサイトにアクセスする▽個人情報入力は詐欺を疑う▽迷惑メールなどを防ぐセキュリティー対策ソフトを活用する▽フィッシングメールが届いたらメールアドレスを変更する-と注意を呼びかけている。

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