甲南医療センター過労自殺 遺族が会見「医師を守れない病院に患者を守れるのか」

高島晨伍さんの写真を手に涙を拭う母淳子さん=18日午後、大阪市北区

 甲南医療センター(神戸市東灘区)の医師、高島晨伍さん=当時(26)=が長時間労働が原因でうつ病を発症して自殺したとして、西宮労働基準監督署が労災認定した問題で、遺族が18日、大阪市内で会見を開いた。母淳子さん(60)は「医師を守れない病院に患者を守り救う資格はあるのか」と涙ながらに訴えた。遺族は違法な残業があったとして昨年12月、労働基準法違反容疑で、センターの運営法人「甲南会」(同区)などを西宮労基署に刑事告訴したという。

 遺族らによると、高島さんは同センター消化器内科の専攻医(旧後期研修医)だった昨年5月17日夕、センター近くの1人暮らしの自宅で自殺した。2月6日を最後に休日がなく、西宮労基署が認定した直前1カ月間の時間外労働は、国の精神障害の労災認定基準(160時間)を上回る207時間50分に達していた。

 会見で淳子さんは「『優しい上級医になりたい』と話していた心優しい大事な息子は帰ってこない」と話した。高島さんが淳子さんらに宛てて残した「嫌な思いをさせてごめん。もっといい選択肢はあると思うけど選べなかった」などとする遺書も読み上げられた。

 高島さんの兄(31)は、高島さんが生前、淳子さんに「『コロナで病院の収益が減った。常識的な残業申請をするように。若い頃から経験より金を取るのは駄目だ』と(センターで)言われた」と話していたと明かした。センター側が今月17日の会見で「過重労働だった認識はない」「自殺の原因は分からない」などと主張したことに対し「弟の死を軽視している」と憤った。

 この問題を巡っては、センターが原因調査の第三者委員会を設置したが、報告書を遺族に開示していないことも判明。センターは、報告書に「職員のプライバシーが含まれる」ため、第三者に公表しないことを条件に遺族に開示するとしたが、遺族側は「当初から、社会に公表できる調査結果の作成をお願いしていた」と反論している。遺族の代理人弁護士は「不誠実な対応が続くのであれば提訴も検討する」としている。(谷川直生、竜門和諒)

© 株式会社神戸新聞社