介護施設のクラスター対応でうつ病、労災認定 事務職に介護や遺体搬送させる 宝塚

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 兵庫県宝塚市の介護老人保健施設に勤務する60代女性が、新型コロナウイルスの大規模クラスター(感染者集団)発生に伴う対応でうつ病を発症したとして、西宮労働基準監督署が労災認定していたことが18日、分かった。女性は事務職だったが介護要員の不足に伴い、隔離病棟で重度認知症の感染者の介護や、遺体を運ぶ業務を命じられていた。代理人弁護士によると「コロナ対応のストレスが原因の労災認定は珍しい」という。

 女性の代理人弁護士らによると、感染「第4波」の最中だった2021年4月、施設で入所者と職員計53人のクラスターが発生、施設内で8人が死亡した。女性は急きょ隔離病棟での勤務を指示された。防護服を着用し、おむつ交換など感染の恐れがある介護業務に計6日間従事。透明の袋に収容された、顔が見える状態の遺体を運ぶ業務にも携わった。

 元の職場に復帰後も、クラスター発生に伴う行政への対応やワクチン接種業務などに追われ、時間外労働が普段の倍の月50時間超に増加。食欲不振や不眠などの症状を訴えて休職し、21年6月にうつ病と診断された。西宮労基署は今年5月、業務で強い心理的負荷を受けたことが原因として労災と認定。女性は、フラッシュバックによるうつ症状などで現在休職している。

 厚生労働省はコロナ禍を踏まえ9月上旬にも、精神障害の労災認定基準に「感染症など病気や事故の危険性が高い業務」への従事を加える通達を出し、運用を改める方針。(広畑千春)

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