県立美術館のシンボル「スズカケノキ」倒れる 50年以上の老大木、残るは1本… 樹木医診断で存否判断

倒れたスズカケノキ。案内板が下敷きになった=9日、県立美術館(同館提供)

 県立美術館のシンボルツリーとして50年以上前から正面入り口に立つ2本のスズカケノキのうち1本が根元から倒れ、関係者から落胆の声が出ている。直径1メートル弱、高さ約15メートルの大木で、近年は樹勢が弱くなっていた。残る1本も倒木の恐れがあるため、現在、正面入り口は閉鎖され、常設展入り口からの入館に変更されている。

 同館によると、倒れたのは9日午前10時ごろ。雨が降り、不安定な天候だったという。南の通路に向かって倒れ、案内板の一部が下敷きになってつぶれた。開館中だったが、巻き込まれた人はいなかった。橋本慎司(はしもとしんじ)副館長兼学芸課長は「4階にいたが、突然ドーンと音がした。何の前触れもなく驚いた。美術館のシンボルが倒れて残念」と話す。倒木は10日に業者が撤去した。

 スズカケノキは、1972年の同館開館前に同所にあった児童養護施設下野三楽園時代から立っていた。同館はスズカケノキが建物のハーフミラーガラスに映り込むように設計され、同館友の会の会報誌名は「すずかけの庭」。多くの人にシンボルツリーとして愛されてきた。もともと4本あったが、腐食などにより2010年に1本、22年に1本が伐採されて2本となっていた。

 同館は移転新築が検討されており、「残りの1本は美術館がここにあるうちは立っていてほしいが、来館者の安全を第一に考えたい」と橋本副館長。今後、樹木医の診断を受け、撤去するか残すかの方針を決めるという。

 一方で、保存を求める声も出ている。同園の関係者7人は今年6月、市民団体「老大木スズカケノキの保存を求める会」をつくり、同館移転後も保存するよう県に要望書を提出した。事務局を務める元同園長田村匡彦(たむらまさひこ)さん(81)は「大正時代に施設の中庭に植えられ、長年子どもと職員の心の支えとなってきた木であり、美術館のシンボル。残りの1本もだいぶ弱っているが、生きながらえる手だてをどうにか考えてほしい」と訴えている。

1本だけになってしまったスズカケの木。安全のため正面玄関は閉鎖されている=17日午前、県立美術館
2本あったスズカケノキ。左側の木が倒れた=2022年10月、県立美術館

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