七不思議堂が新潟で宿に 吉崎・蓮如記念館の登録文化財

新潟県に移築される七不思議堂=5月、あわら市吉崎1丁目

  ●11月に移築、解体進む

 浄土真宗中興の祖・蓮如上人の史料を展示する吉崎御坊蓮如上人記念館(あわら市)の国登録有形文化財「七不思議堂(ななふしぎどう)」が11月、新潟県妙高市の赤倉温泉に移築され、1棟貸しの宿に生まれ変わる。明治期に砺波市で築造、約40年前に現在地に移った古民家で、富裕層や外国人向けの宿泊施設とするため、不動産事業を手掛ける東京の民間企業が購入し、移築に向けた解体工事が進められている。

 七不思議堂は、熊谷組社長や科学技術庁長官を務めた熊谷太三郎氏の妻の実家・根尾家の主屋として1881(明治14)年に砺波で建てられ、1979(昭和54)年にあわら市吉崎に移された。

 建物は切妻造(きりづまづく)り、桟瓦葺(さんがわらぶ)きの木造2階建てで、砺波地方の伝統建築様式「アズマダチ」の構造と意匠を備え、2012年に国登録有形文化財となった。蓮如上人にまつわる民話を福井の伝統工芸品で再現した展示施設となっている。

 蓮如上人記念館を運営する本願寺文化興隆財団(京都市)は隣接する道の駅「蓮如の里あわら」の開業に合わせ、所有施設のリニューアルを進めている。イベント広場や散策路を整備するため、七不思議堂の移築を検討していたところ、東京の業者が手を挙げた。

 解体工事は10月末までに完了する予定で、その後、新潟の赤倉温泉に移す。移築後は水回りなど内装を最新の設備に改装し、家族連れらが泊まる1棟貸しの宿として活用される。

 本願寺文化興隆財団の担当者は「あわら市で長年親しまれた施設が新潟に移るのは寂しいが、宿泊施設として多くの人に利用されてほしい」と話した。

 ★七不思議堂 越中で活躍した堂宮大工・松井角兵衛が手掛け、北陸産のケヤキなどの高級材のほか、ビンロウジュの床柱、屋久杉の天井板など現在では入手できない建材が用いられている。「火消し蟹」や「嫁威(おど)し肉付面(にくづきめん)」など蓮如上人にまつわる七つの民話を越前和紙や竹人形で再現している。

蓮如上人にまつわる民話が展示された館内

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