コメ概算金、コロナ前水準 県産うるち、2年連続で全銘柄増

 全農富山県本部は18日、2023年産米の委託販売契約を結んだ生産者に各地域農協を通じて支払う「概算金」の金額を発表した。富山米新品種「富富富(ふふふ)」は1等米60キロ当たりで前年産比700円増の1万3800円、主力品種コシヒカリも同額増で1万3千円など、うるち米の全銘柄が2年連続で前年超えとなった。新型コロナウイルスの影響を受ける前の20年産米と同水準に戻った。

 同本部によると、中食・外食向けの需要が回復傾向にあり、国が公表した6月末時点のコメの民間在庫量は197万トンで昨年から21万トン減り、需給が均衡する水準である200万トンを下回った。来年6月末時点ではさらに在庫量が13万トン減って、184万トンになり需要が高まると見込まれる。

 一方、生産現場では肥料価格が高騰しており、同本部の試算では、国の対策を含めても生産コストがコメ60キロ当たり300~350円増えている。同本部はこのような動向を受けて概算金を決定した。

 コシヒカリは、21年にコロナ禍による外食産業の落ち込みから前年産比2千円減となったが、2年連続の増加で元の1等米1万3千円まで戻した。富富富は市場デビューした18年産から20年産まで1等米で1万4500円を据え置いたが、21年産では1万1800円に下落。23年産では1万3800円に回復した。

 早生(わせ)品種「てんたかく」と晩生(おくて)品種「てんこもり」の1等米は前年産比1300円増の1万1600円とした。昨年の増加幅が、富富富やコシヒカリよりも小さく価格差が広がったため、今年は是正した。

 酒米は、日本酒の需要は頭打ちとなっている一方で、県産米には需要があることから700円増の1万2700円とした。もち米(新大正糯(もち))は県内の米菓会社から安定した需要があるとして、700円増の1万4200円とした。

 同本部は「米穀卸業者や実需者に対し、生産コスト上昇などを丁寧に説明し、産地と取引先の結びつきを強化する」とした。

  ●猛暑で品質に懸念

 コメ市況調査会社の米穀データバンクが発表した23年産米の収穫予想は、全国の作況指数が101で「平年並み」となっている。同本部米穀園芸部の中野裕司部長は、出穂後の平均気温が30度を超えていることからコメの品質に影響が出ないか懸念し「富富富が持つ暑さに強い特性が品質維持につながることを期待する」と述べた。

 ★概算金 生産者が農協に出荷する際に支払われる一時金。全農が各地域農協に支払う金額を通知する。全農県本部は23年産米の契約・販売状況に応じて12月に追加払いを実施する。

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