「苦しい思いをする女の子を減らしたい」AV被害を受けた女子大生が明かす犯行の実態と胸のうち

静岡県警は、新たに施行されたAV出演被害防止・救済法を初めて適用し、双子の兄弟を逮捕しました。同様の手口で被害を受けた女性が全国で150人に及ぶ可能性があるというこの事件。被害を受けた女子大学生が「苦しい思いをする女の子を減らしたい」とSBSの取材に応じました。

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<被害を受けた女子大学生(20代)>
「(公開が)海外だからね、みたいなことは言っていて。だから一般の人は見られないから、身バレはしない(=身元は割れない)と思うと言っていましたね」

逮捕・送検されたのは、アダルトビデオ制作販売業の男(41)とその兄で自称・男優の男(41)です。

警察によりますと、2人は2022年11月下旬から2023年5月初旬までの間に、アダルトビデオを制作する過程で、20代の女性3人と出演契約を交わす際に必要な書面などを交付しなかったほか、出演した事実が特定される恐れがあることを説明せずにインターネット上の販売サイトに動画を配信するなどした疑いが持たれています。

2022年施行されたAV出演被害防止・救済法では、出演者が「考え直す時間」を確保するため、契約書を交わしてから1か月間は撮影してはならず、撮影終了後も4か月間は映像の公表を禁止しています。

2人から被害を受けた20代の女子大学生です。

「奨学金の返済に向けて少しでも稼がなければ」と、2023年3月、「高収入」と書かれたネット広告を見つけ、AV撮影と認識した上で2人とLINEで連絡を取りはじめました。

<被害を受けた女子大学生>
Q.契約に関する詳細について書いてあったか?
「そこは『当日の話し合いで』と。自分も『ここまではいいかな』って思うところがある状況でやっていたので、多分断れると思ったので応募しました」

女子大学生は、指定されたJR京都駅で2人と合流すると、車に乗せられたといいます。

<被害を受けた女子大学生>
「車に乗った状態から話が始まったんですけど、だから、もう車が動いてる状態から(撮影について)話があり、『モザイクはなしだよ』とか、『もう覚悟決まっているよね?』みたいな感じで、ちょっと圧を感じた」

本来であれば、出演についてサインを交わし、撮影までには1か月の期間を設ける必要がありますが…。

<被害を受けた女子大学生>
「1個、『署名、名前書いてね』みたいなのはあったんですけど、それもなんか屋上で撮影があって、次の撮影場所に移動してラブホテルの中で書いたんで。他の女の子の名前の書いてあるやつを見せてもらって、『こんな感じに書いておいて』と」

女子大学生は「顔は出せない」と伝えましたが、2人は「海外向けの公開だからバレない」などと希望に応じず、出演した事実が特定される恐れがあることを説明することなく、撮影された動画はインターネット上の販売サイトに配信されました。

<被害を受けた女子大学生>
Q.そこで嫌だとか、できませんと断るっていうことはできたと思いますか?
「自分は大きい荷物を持っていたし、『絶対逃げられないな』と思った。『断ったらやばいかな』という感じで断れなかったですね」

アダルトビデオの出演トラブルなどに苦しむ被害者を支援する団体「ぱっぷす」の理事長は、新たな法律は出演者が「泣き寝入り」していた状況を打破できる可能性があるといいます。

<ぱっぷす 金尻カズナ理事長>
「これまでは被害を訴えたとしても、結局は被害を救済をするための法律がなかったために、多くの方が泣き寝入りを余儀なくされていたが、今回、法律ができたことによって、相談を寄せる人にとっては希望を持てる内容になっている」

逮捕された2人は不正に撮影した動画を販売することで、2022年からの1年半で3億円の利益を得ていたとみられています。

<被害を受けた女子大学生>
「(事実を)友人にも言えないし、自分で抑えている状態です。悲しく、苦しくなるのは、女の子たちだから、(被害の実態を)知ってもらいたいと思いました」

<水野涼子キャスター>
一度、インターネット上で配信された映像は、女性にとってデジタルタトゥー(インターネットで一度拡散された情報などを完全に削除するのが難しいこと)となり、残り続けます。被害に遭わないためにも、被害の実態と自らを守る法律があるということを知ることが大切です。

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