社説:「多弱」の野党 対立軸と立ち位置、練り直せ

 民主主義を機能させるには、国会で与野党が緊張感を持って議論することが欠かせない。

 だが、衆参両院で約6割を占める与党の自民、公明両党に対し、野党は分散して「多弱」の状態が続いている。

 衆院は10月に任期の折り返しを迎え、解散総選挙も取りざたされる。野党は現状を直視した上で、政策と立ち位置を明確に打ち出すべきだ。

 21日には、任期満了に伴う国民民主党の代表選(9月2日投開票)が始まる。与党との協力に踏み込む玉木雄一郎代表に対し、前原誠司代表代行(衆院京都2区)は「非自民非共産」の野党連携を目指すという。

 衆参21人で存在感の薄い同党にとって、野党の在り方や役割を争点にする意義はあろう。活発な議論を求めたい。

 再生が急務なのは、野党第1党の立憲民主党も同様である。就任から1年半が過ぎた泉健太代表(衆院京都3区)は、迷走ぶりが目に付く。

 当初は「政策提案型」の野党を掲げたが、6議席を減らした昨夏の参院選後、政権との対決姿勢を強めた。日本維新の会との国会共闘も進めたが、4月の統一地方選や衆院補選で後退した。維新とは決裂し、共産党との選挙協力も否定した。

 これに党内では「野党候補を一本化し政権交代を実現する」とした有志の会が設立されるなど反発が拡大。泉氏は野党との候補者調整を模索する方針に変えた。党内で求心力を欠いた状態で、国民の期待が高まるはずもない。直近の政党支持率は維新が若干上回っている。

 何より選挙結果を厳しく総括し、次期衆院選への看板政策や政権構想を打ち出す姿勢が見えないのは理解に苦しむ。泉氏の行動と発信が問われている。

 維新は参院選で議席倍増にあたる12人が当選し、統一地方選で400人台だった首長・地方議員を700人台に乗せた。馬場伸幸代表は立民と距離をとり、「まず、たたきつぶす」「いても日本はよくならない」などと批判している。

 過激な発言で野党内でのトップを狙うつもりのようだが、公党の代表として見識を疑う。考えの異なる他者を全否定しては民主主義は成り立たない。

 馬場氏は「第1自民、第2自民でいい」とも語った。「身を切る改革」の果ては、自民との連立なのだろうか。

 共産党は京都府・京都市議選で計7議席を失うなど、統一地方選で計135議席減になった。党首公選を求めた京都の党員除名に対する批判を「攻撃」と切り捨てるだけでいいのか。今後の姿勢が注視されよう。

 野党の混迷が、低支持率の岸田文雄政権を支えている面も大きい。人口減への対応や国民負担の在り方など与党との対立軸を練り直し、有権者の選択肢を提示してもらいたい。

© 株式会社京都新聞社