小学生の疑問「使われなかった食材、動物園で使ってるの?」 数十年前から広がり 餌代高騰で経営下支え 栄養管理でなじまぬ事例も

飼育員からリサイクルされた餌を与えられるポニー=7月下旬、宇都宮動物園

 「レストランなどで使われなかった食材を動物園に寄付するという県外の取り組みを紹介した記事を新聞で読みました。栃木県内でもそのような取り組みをしているのでしょうか」。下野新聞「あなた発 とちぎ特命取材班」(あなとち)にこんな声が寄せられた。国連の持続可能な開発目標(SDGs)への関心も高まっている中、県内の動物園などに実情を聞いてみた。

 まず話を聞いたのは、宇都宮動物園(宇都宮市上金井町)の荒井賢治(あらいけんじ)園長(59)。廃棄予定の食材を餌として寄付してもらいリサイクルする取り組みは、「30年以上前から行われている」と教えてくれた。日本の「もったいない精神」はSDGsのはるか先を行っていたようだ。

 同園では週1回ほど、飼育担当の職員が、協力してくれるスーパーや青果店、豆腐店などを回り、パンや野菜くず、おからなどを譲り受ける。荒井園長は「餌代も高騰してきているので、本当に助かっている」と話す。

 かつては、2トントラック2台分に近い野菜くずなどが届いたこともあったが、最近は減少。環境配慮の広がりゆえか、「食品ロスが出ないよう皆さん努力しているのではないか」というのが荒井園長の見立てだ。

 那須町高久乙の那須サファリパークでも20年近く前から、同様の取り組みを実施。飼育員がスーパーや給食センターに出向き、野菜くずや余ったパンなどを受け取っている。

 内海(うつみ)一秀(かずひで)副支配人(51)は「経費削減につながりありがたいし、食品ロス削減にも貢献できるのは良いこと」と取り組みの意義を強調する。「パンが好きな動物も多い」と、飼育環境の向上につながる効果も明かしてくれた。

 日光市柄倉(からくら)のおさるランド&アニタウンでは、最近取り組みを始めた。野菜を納入する業者が商品にならない野菜を持ってきてくれたり、レストランから食パンの耳をもらったりしているという。

 伊畑直樹(いはたなおき)支配人(52)は「無駄がなくなるのはいいこと。これからも地域と密着していろいろなことに取り組みたい」と力を込めた。

 一方、必ずしも廃棄食品のリサイクルがなじまない例もあった。那須町大島の那須どうぶつ王国では、動物たちの栄養管理などを理由に食材リサイクルの取り組みは行っていない。

 那須どうぶつ王国によると、廃棄予定の食材の活用には、栄養管理が難しくなる側面があるという。食材が定期的に入らなかったり、栄養価が少ない部位が届くケースもあったりするためだ。

 大きな冷蔵庫を保有していないこともあり、「なるべく新鮮な餌を与えたいし、大量の食材を譲り受けても保存できずに無駄にしてしまう可能性もある」と広報担当者。必要な餌をその都度購入しているという。

 活用している園にとっても、傷んだ食材などは「提供されても困ってしまう」(関係者)といい、提供側と受ける側の相互理解が欠かせないようだ。

 それぞれの飼育施設の事情に左右はされるが、時代の流れもあり、さらに広がりを見せる可能性もある食品リサイクルの取り組み。

 今回、質問を寄せてくれたのは、大田原市薄葉小5年平山新(ひらやましん)君(10)。県内の実情を伝えると、「30年も昔からやっていたのは驚いた。これからも資源を無駄にしないよう頑張ってほしい」と話していた。

© 株式会社下野新聞社