疎開前、革命的173点 棟方生誕120年企画展福光美術館で開幕

石井さん(左)の解説を聞き、作品を鑑賞する来館者=南砺市の福光美術館

  ●「二菩薩釈迦十大弟子」など一堂に

 板画家(はんがか)棟方志功生誕120年の企画展「二菩薩釈迦十大弟子(にぼさつしゃかじゅうだいでし)への道」(富山新聞社、北國新聞社後援)は19日、南砺市福光美術館で開幕した。33通りの観音菩薩の姿を彫った「観音経曼荼羅(かんのんきょうまんだら)」をはじめ、棟方が福光に疎開する前、30代だった頃に手掛けた革命的な173点が展示され、来館者が圧倒的な迫力の世界に触れた。

 棟方は1945(昭和20)年4月から福光に疎開し、約6年8カ月間、真宗王国の信仰心の厚い人々と交流する中で表現力を磨いた。

 企画展では、東京・中野区時代の1935~40年の作品を一堂に公開した。

 2人の菩薩と釈迦の10人の高弟が描かれた代表作の六曲一双屏風(びょうぶ)「二菩薩釈迦十大弟子」は12点ある板木のうち2点が空襲で焼ける前に刷られた「原画」ともいえる作品。棟方は戦後、板木が焼失したことから、福光でふくよかな二つの菩薩に彫り直した。この作品が海外で高い評価を受け、「世界のムナカタ」へ押し上げた。

 裏彩色の技法を本格的に取り入れた「観音経曼荼羅」や、日本武尊(やまとたけるのみこと)の生涯をうたった佐藤一英(いちえい)の長詩を絵と文字で彫った板画の絵巻物「大和(やまと)し美(うるわ)し」、生活のために鳥のひなを捕った猟師の苦しみを描いた謡曲「善知鳥(うとう)」を基にした連作「善知鳥版画巻」など、棟方の斬新な技法や革命的な発想があふれる作品が並んだ。

  ●石井氏が作品解説

 棟方の孫で、福光美術館特別専門員の石井頼子さんのギャラリートークが行われ、石井さんは「棟方の骨格ができあがる時期の作品で、疎開した福光で心に筋肉を付けることになる」と解説した。

 開会式で田中幹夫市長は「石井さんとの信頼関係で、素晴らしい作品がそろった」とあいさつ、水口秀治市議会議長(市棟方志功まちづくり連絡協議会長)が祝辞を述べた。

 企画展は10月16日まで。一般700円、高校・大学生210円、中学生以下無料。

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