浦和のサポーター問題で思うこと/六川亨の日本サッカー見聞録

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さて、浦和対名古屋戦である。8月2日の天皇杯4回戦で浦和のサポーターがピッチなどに乱入して暴徒化した問題から16日後、両チームはリーグ戦で再び対戦した。その間の経緯については多くの報道がなされているが、改めて簡単に紹介しよう。

問題発生から3日後の8月5日、浦和は急きょ14時から会見を開いて事情説明した。出席したのは田口誠代表取締役社長と、現場の責任者である須藤伸樹マーケティング本部長だった。浦和関係者によると、当初は田口代表取締役社長だけが会見に臨む予定だったが、就任して間もないだけにフォロー役として須藤本部長も出席することになったという。

その須藤本部長が、説明不足――「暴力行為はなかった」――と発言したため会見は炎上した。ネットでは暴力行為の動画が拡散され、JFA(日本サッカー協会)の田嶋幸三会長も「安全、安心が損なわれるようなものになるとすれば、それは我々も毅然と判断しなければならない」と厳罰の可能性を示唆した。

浦和は16日にHPで改めて事実経過を釈明。5日の会見は『日本サッカー協会様(以下、JFA様)、Jリーグ様、愛知県サッカー協会様(以下、愛知FA様)、名古屋グランパス様、浦和レッズ、そして両クラブサポーターの7者間で行われ、両クラブのサポーター間での和解が成立いたしました』と、映像を確認してからの事実経過ではないことを報告。

さらに、『上記違反行為者のうち1名は、過去において暴力行為などの違反行為を理由に入場禁止処分を受けていたことがクラブ内の記録から確認されており、そうした事実も重く受け止め、客観性、公平性、継続実現性の担保や法的根拠などを様々な角度から検証し、外部有識者の知見もお借りしながら新たな基準作りにスピード感をもって取り組んでまいる所存です』と管理体制の杜撰さを認めた。

須藤本部長の“言葉足らず”が炎上を招いた。

さらに別の浦和関係者は「浦和に限らず、サポーターが問題を起こしたら“無期限入場停止”ではなく明確に期限を区切るか、永久停止にすべきでしょう。“無期限”ということは、“お咎めなし”なら1週間で埼スタに来られる。サポーターあってのJリーグですが、収益の確保と安全性の担保は分けて考えるべきではないでしょうか」と指摘した。

まさにその通りである。

そして、8月2日に事件が発生して以来、JFAもJリーグも浦和に対してどのような措置をとるのか沈黙を保ったままである。事実確認を正確に期すため時間をかけているのかもしれないが、その間にもリーグ戦は進んでいる。夏休みのため子供らを含めて多くのファン・サポーターがスタジアムに足を運ぶだけに、不祥事に対する処罰はスピード感こそ重要ではないか。まさか“お盆休み”だから会議がストップしていたわけではないだろう。

18日の試合では、名古屋のサポーター席は2重の柵で浦和サポーターと隔てられ、総勢10名の警備員が名古屋サポーターをガードしていた。試合は浦和がホセ・カンテのゴールで7月1日以来、5試合ぶりの勝利を収めたが、新たな問題点も感じた。

それは主審のジャッジである。

浦和が1-0とリードした前半22分、自陣ゴール前からカウンターを仕掛けようとしたところ、岩尾憲が河面旺成の背後からのタックルに悶絶した。かなり危険なタックルだったので、河面にはイエローカードが出ると思ったし、浦和の選手もそれを要求した。ところが池内主審はノーカード。もしかしたら河面は16分にすでにイエローカードを受けていたため、ここでイエローカードを出したら退場になると池内主審は“忖度”したのかもしれない。

ゲームのバランスを取るのも主審の役割の1つかもしれないが、危険なプレーには毅然とした態度を取るべきだ。その前の21分、ボールをロストした小泉佳穂が追走して相手を倒したプレーに池内主審はイエローカードを出している。それが判断基準ならと疑問を感じざるを得なかった。

そして極めつけは38分、関根貴大が倒れているのに池内主審はプレー続行を示し、名古屋の攻撃はタテパスがゴールラインを割ったため終わったが、浦和ゴール裏のサポーターからは大ブーイングが起こった。ホームにもかかわらず、(浦和サポーターにとって)不利な判定を下されたのだから、主審に対してアピールする手段はブーイングしかない。浦和には4人の選手にイエローカードが出された。対する名古屋は2人。それも正しいジャッジなのか疑問である。

問題にしたいのは、浦和のサポーターに限らず主審のジャッジもサポーターの“暴徒化”を招く可能性があると感じたことである。ストレスをため込みながらも勝利したことで、浦和サポーターの溜飲も少しは下がったかもしれない。

しかし池内主審に限らず、今シーズンは主審の世代交代というか若返りを実感しているぶん、ミスジャッジも増えている印象が強い。それも“サッカーの一部”と言われればそれまでではあるが……。


【文・六川亨】

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