数百匹のチョウが飛び交うカフェ「てふてふ」、芦屋にオープン 運がよければ目の前で羽化も

チョウが飛び交うテラス=芦屋市伊勢町

 数百匹のチョウがテラスを飛び交う「カフェ&ギャラリー てふてふ」が、兵庫県芦屋市伊勢町にオープンした。色とりどりの羽ばたきを間近で眺めながら、飲み物やデザートを楽しむことができる。オーナー白木克典さん(58)のチョウへの愛があふれ出た空間になっている。(村上貴浩)

 店は住宅街の中にひっそりとたたずむ。カウンターやソファ、テーブル席がそろった店内は一見、普通のカフェと変わらないが、テラスに出ると景色が一変する。

 3人掛けのソファの周りを黄や白、黒のチョウが飛び回る。花木がところ狭しと並べられ、甘い香りが漂う。3世代で訪れた女性(75)は、チョウの羽ばたく姿が好きだといい「ここまで近くで花の蜜を吸う姿を見られるのはすごい」と喜び、孫の女児(4)は「いろんな色のチョウが飛んでてとってもきれい。写真もいっぱい撮れた」とほほ笑んだ。

 幼い頃はカブトムシなどを捕るのが好きだった白木さん。大人になるにつれて触れる機会も減ったが、子育て中だった20年ほど前、チョウの卵に偶然出合った。自宅のベランダで育てようとホームセンターで買ったレモンの木の葉に、飛んできたチョウが産み付けていた。

 「このまま羽化するのか見てみたい」。幼かった息子や娘と観察を続けるうち、興味はレモンからチョウに移っていった。「チョウに来てほしくて、レモンの木を何個か買い足しました」

 一方、農作物の葉を食べる害虫として駆除されることや、自然での羽化率が低いといった事情を知り、「守りたい」と考えるように。約10年前、友人らで「ちょうちょ育む会」を立ち上げた。お気に入りのスポットは伊丹市昆虫館のチョウの温室。ベンチに座ると「天国ってこんな感じだろうか。こんな場所をつくりたい」と思うようになった。本業の建設業の技術を生かして、もともと集合住宅だった建物を改修し、7月20日、1階部分にカフェを開いた。

 テラスの室温はチョウが好む25度を常に維持しており、幼虫からさなぎ、成体になる。多い時期には約10種類、約300匹のチョウが舞い、運が良ければ羽化の瞬間を見られるのも魅力の一つだ。

 提供されるメニューは飲み物とスイーツなど約40種類。「蝶々の一生」と名付けたパフェにはチョウをかたどったチョコが添えられている。足元を見ると、スリッパにもチョウの飾り。壁にはチョウをモチーフにした絵画が並ぶ。障害のある人らによる作品で、いずれも購入できる。ファンを意識した工夫が随所に光る。

 成体となったチョウの寿命は約2週間。「元気に飛び回っていた次の瞬間に倒れてしまうこともある。そのはかなさに美しさや魅力を感じる」と白木さん。「街中で虫に触れる機会は減っている。子どもにも大人にもチョウの魅力を知ってもらえる場所にしたい」と話している。

 午前9時~午後6時。火曜定休。カフェ&ギャラリー てふてふTEL090.2015.3087

© 株式会社神戸新聞社