犬の『クーラー病』4つの症状とは?何気なく使っている冷房が愛犬にダメージを与えていることも

犬の「クーラー病」の症状

年々夏の暑さが厳しくなるにつれ、エアコン等のいわゆるクーラーの稼働率も増してきているのではないでしょうか。室内でも熱中症のリスクはありますので、犬を飼っているご家庭ではクーラーの使用は必須、という場合が殆どかと思います。

しかし、ここで心配になってくるのが、犬の「クーラー病」です。

「クーラー病(冷房病)」とは、冷たい空気にあたり続けたり、涼しい部屋で体が冷えすぎたりすることにより全身に不調が生じたり、暑い外気温と涼しい室温との気温差によって自律神経が乱れ体調不良になることをといいます。実はこのクーラー病は、人間だけでなく犬もかかる病気なのです。

熱中症は命にも関わる病気なので、犬の健康のためにも、夏はエアコンを使用した室温管理が必須でしょう。ただし、室温を低く設定しすぎてしまったり、犬の生活スタイルによってはクーラー病になる可能性もあるため、犬の体調の変化に気付くことが大切です。

ここからは、そんな犬の「クーラー病」の症状について確認していきましょう。

1.くしゃみや咳

犬のクーラー病の症状として、自律神経の乱れによって鼻の粘膜が過敏になったり、あるいはクーラーによる乾燥などが原因で、くしゃみや鼻水、咳などの症状があらわれる場合があります。

症状が風邪と似ているため、勘違いしてしまいそうですよね。なお、悪化すると、気管支を痛めてしまう可能性も否定できないので、注意が必要です。

乾燥予防については、『犬が快適に過ごせる湿度は50%前後』といわれていますので、犬のいるエリアに湿度計を設置して、エアコンで空気が乾燥し過ぎないように管理しましょう。

2.食欲がない

食欲がなくなるのも、犬のクーラー病の症状のひとつです。自律神経の乱れによって消化器官の働きが落ちたり、食欲を感じにくくなったりすることにより、食欲不振になってしまうのです。

普段は食べるのが大好きな愛犬が、急にご飯やおやつを欲しがらなくなった場合はクーラー病になっているかもしれません。

3.元気喪失

クーラーを使う季節に犬が散歩に行きたがらない、いつもより寝てばかりいるようになったなど元気がない様子の場合、クーラー病になっている可能性があります。

クーラー病によって自律神経が乱れ、全身がだるくなったり、疲れやすくなったりして、元気がなくなってしまうのです。

4.下痢、嘔吐

下痢や嘔吐も、クーラー病の症状です。自律神経の乱れにより胃腸が不調となったり、クーラーの風にあたることでお腹が冷えたりするのが原因と考えられています。

下痢や嘔吐が続くと、脱水症状になる危険性もあって注意が必要です。

犬の「クーラー病」予防対策とは

犬の「クーラー病」について分かったところで、ここからはその予防対策について考えていきましょう。クーラーは人間が管理するものですので、飼い主としての意識が変わればきちんと予防できるはずです。

室温を下げ過ぎない

『犬が快適に過ごせる室温は23度前後』といわれていますが、夏の場合は外との気温差が大きくなることでクーラー病になりやすくなります。そのため、エアコンの設定温度は外気と差をあまり大きくしない「25~27度」がおすすめです。

とはいえ、エアコンの性能や犬種によって快適な設定温度は変わってきますので、犬が暑いときにするパンティング(はあはあと浅く早く呼吸すること)をしていないか、寒そうにしていないか、愛犬の様子をみながら室温調整をしてあげてください。

犬が室温と外気温の気温差を感じるのは、ほとんどの場合お散歩でしょう。お散歩の前15分くらいにはエアコンを切ったり、エアコンのない部屋で少しだけ過ごしてから散歩にいくなど、できるだけ気温差を感じないようにするのもひとつの方法です。

サーキュレーターや扇風機を活用する

犬のクーラー病予防対策として、サーキュレーターや扇風機を活用するのもおすすめです。

エアコンから噴き出す冷たい空気は、暖かい空気より重くなり、部屋の中でも床近くに溜まっていきます。そのため、エアコンの設定温度を適正にしていても、人間より床に近い位置にいる犬にとっては寒く感じてしまうことがあるのです。

しかし、サーキュレーターや扇風機を使えば、犬のいる低い位置の冷たい空気を循環させられるので、犬の体の冷えすぎ防止になります。

ただし、好奇心旺盛な犬の場合は、動いているサーキュレーターや扇風機にいたずらしてしまうことも。愛犬がケガをしないよう、サーキュレーターや扇風機の安全対策も忘れずにしてくださいね。

ケージやクレートの位置に注意

クーラー病の原因のひとつに、クーラーの冷たい風を犬が直接受けてしまい、体が冷えすぎてしまう、ということが挙げられます。

ケージやクレートで過ごすことが多い犬の場合、エアコンの風が直撃する場所にそれらを設置してしまうと、犬は冷風を避けられなくなってしまいます。

愛犬をクーラー病にしないためにも、ケージやクレートはクーラーの風があたらない場所に設置するようにしてくださいね。

まとめ

今回は犬の「クーラー病」の症状と予防対策についてご紹介しました。

犬の暑さ対策には注意していても、冷え過ぎも問題だという事実には、結構驚かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

重症化すると命の危険もある熱中症と、夏の犬の体にじわじわとダメージを与えるクーラー病。夏の間はこのどちらにも気をつけつつ、愛犬と一緒に無事に暑い夏を乗り切りたいですね。

(獣医師監修:平松育子)

© 株式会社ピーネストジャパン