マクラーレン、契約不履行としてパロウに対する法的手続きを開始。インディおよびF1プログラムに関する損害賠償請求へ

 マクラーレンは、現在F1リザーブドライバーを務めるアレックス・パロウが2024年のインディカーに関する契約を守る意思がないことが明らかになったとして、彼に対する法的手続きを開始した。

 昨年、マクラーレンと、パロウが所属するチップ・ガナッシ・レーシングとの間で、パロウの契約をめぐる争いが起きた。結局、パロウは2023年にガナッシに残留したが、この際に、2024年にはマクラーレンのインディカーチームに移籍するという推定的な合意がなされ、それによって、マクラーレンF1でのテストが許可されたものと考えられている。

マクラーレンF1ハンガリーテスト アレックス・パロウ(マクラーレンMCL35M)

 しかしマクラーレン・レーシングのCEOザク・ブラウンは、パロウからその合意を守る意思はないと言われたということを、今月、明らかにした。現在パロウはインディカーでランキングトップに立っており、2位に100点差をつけている。彼はガナッシに残留することを望んでいるとみられる。

 マクラーレンはパロウに対して2024年のサラリーの一部を前払いし、彼のF1カーテストプログラムについても多額の投資を行ってきたと、ブラウンは主張している。

ザク・ブラウン(マクラーレン・レーシングCEO)

 8月18日、『インディアナポリス・スター』紙が、マクラーレン・レーシング・リミテッドとマクラーレン・インディは共同で、2024年にマクラーレンのインディカーチームで走る契約に違反する疑いで、パロウに対する訴訟を起こすべく、正式な申請を英国商業裁判所に提出したと報じた。その後、ブラウンは『Forbes』などを通して、次のような声明を発表した。

「我々は、2024年にアレックス・パロウとともにレースをすることを楽しみにし、彼に多額の投資を行った」とブラウン。

「この問題の解決法として、法的システムに信頼を置いている。それ以上のコメントは控える。チームとして、シーズン終盤戦と、2024年のプランに集中していく。準備が整い次第、プランを発表する予定だ」

 訴状の内容は明かされていないものの、『インディアナポリス・スター』によると、パロウと彼が所属するALPAレーシングUSA LLCに対する訴訟が、それぞれ8月16日と8月11日に起こされたという。

 訴訟は金銭に関する“パート7”の申請であることから、マクラーレンは、パロウに契約を守らせて2024年にチームに加入させることよりも、これまで費やしたコストを回収することを望んでいるようだ。

2022年F1第19戦アメリカGP アレックス・パロウ(マクラーレン)

 ブラウンCEOはマクラーレンの従業員に対する書簡のなかで、パロウに対してすでに多額の投資を行ったと明かしている。

「彼(パロウ)が、直接および公式に我々に対して行った約束、さらに我々がその約束に基づいて彼に行った多額の投資を考えると、非常に残念なことだ」とブラウンは記している。

「我々は、2024年シーズンに向けて最初の多額の報酬を彼に支払った。さらにF1テストプログラムにおいて彼を育成するために、また、将来F1で走る可能性を含むリザーブドライバーの役割についても数百万ドルを費やしている」

「残念ながら、我々のアレックスに対する信用、コミットメント、投資、信頼は報われず、誤ったものであったようだ」

 一方、パロウが所属するチップ・ガナッシ・レーシングは、マクラーレンの見解は誤っており、パロウは同チームとの契約下にあると主張している。

アレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング)

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