青森県内、墓じまいの依頼急増 例年の4~5倍に 継承者なし、維持難しく

やまと石材が県内で行った墓じまいの様子。重機で慎重に墓石を運ぶ=2022年10月(提供写真)

 墓を撤去し墓所を更地にする「墓じまい」を申し込む世帯が青森県内で増えている。青森市の石材店に寄せられる墓じまいの依頼は今年、例年の4~5倍に上る。「墓の継承者がいない」「墓を維持管理できなくなっている」と、墓じまいして合葬墓や永代供養墓に入る手続きを取る世帯が増えているという。

 青森市の石材店「やまと石材」には今年4月から7月末まで、墓じまいの相談が県内全域から50件ほど寄せられ、約20件が成約に至った。例年、この期間の相談は10件、成約は5件ほどという。

 「相談の多さに驚いている」と同社青森本店店長代理の宮崎陽(あきら)さん。「『県外で暮らす息子・娘に墓の管理をさせるのは心苦しい』と墓じまいを決める人が目立つ。コロナ禍の自粛期間中に、お墓や人の死について考える人が増えたのかもしれない」と話した。

 同社の墓じまいの費用は、墓の大きさや構造、地理的条件で違ってくるが、平均は24万~25万円。中には100万円を超える大がかりな工事もある。「約8割の人は墓じまいを終えてすっきりした様子を見せる」と宮崎さん。終活カウンセラーとしてさまざまな市民の悩みや相談に応じてきた経験から「お墓を将来どうするかは、管理する人や家族が元気なうちに話し合っておくことをお勧めする」と述べた。

 八戸市の石材店でもここ2、3年、墓じまいの申し込みが増えており、担当者は「市の合葬墓や寺院の永代供養を希望する人が多くなった。墓じまいに心理的抵抗感を持つ人が少なくなっている」と話した。

 青森市生活安心課によると、市営4霊園(三内、月見野、八甲田、浪岡)の返還区画数(墓じまい件数)は2020年度299区画、21年度218区画、22年度289区画と高い水準で推移。

 空いている区画は4霊園合計で、20年度840区画、21年度967区画、22年度1160区画と年々増えている。墓じまいを申し込んだ人の2割強が、市の合葬墓に申し込んでいるという。

 「(配偶者や子どもがいない)おひとりさまは、墓守の最後となる人が多く、いつも墓じまいは話題に上る」。そう語るのは単身者の終活をサポートしている青森市のNPO法人・SOLOの髙島一美さん。墓じまいが増える背景として「少子化や単身者の増加など人口構造の変化がある。先祖代々の墓から分家した墓が増えており、管理が難しくなっていることも要因」と説明する。課題について「経済的に厳しい世帯にとっては、墓じまいして合葬墓などに入る費用の負担は重い。資金不足でできない人もいる」と述べ、行政の支援や、墓じまい費用の引き下げの必要性を指摘した。

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