京都・丹後の海 楽しさと美しさ伝える シーカヤックで洞窟へ

観光客が乗ったシーカヤックをこぎながら、山陰海岸ジオパークの海を案内する澤さん(京丹後市網野町三津)

 日本海を一望できる三津漁港(京都府京丹後市網野町)一帯で、シーカヤックを自在に操り、観光客を山陰海岸ジオパークの景観へといざなう。「子どもの頃から遊び、慣れ親しんだ場所。でも気を引き締め、安全に配慮している」。澤佳奈枝さん(38)の日焼けした顔とパドルを持つ鍛え上げた腕が頼もしい。

 2020年5月、シーカヤックやシュノーケリングのインストラクターとして周辺の海を案内するマリンレジャー事業所「翔笑璃(とびわたり)」を開業。京阪神を中心に300組以上がツアーに参加した。事業所名はコースにある地層が折り重なった岬の通称「飛び渡り」に由来する。海底が手に取るように見える透明度の高さが自慢だ。波の浸食でできた奥行き約30メートルの洞窟には、シーカヤックで入れる。客からは「沖縄に行かなくても、ここがいい」との言葉を聞いた。心からうれしかった。

 幼少期に通った水泳教室の指導者に憧れ、地元スイミングスクールに就職した。インストラクターを務めた後、自ら新たなスクールを立ち上げたが、一時的な体調不良もあり、19年7月に閉鎖。リハビリを兼ねて三津の海を泳ぐと洞窟を見つけた。「海で遊ぶ楽しさを教える仕事をしたい」。マリンレジャーが盛んな宮古島(沖縄県)で半年間、実務と経験を積み重ねた。

 故郷の海で気になることがある。漂着ごみの多さだ。美しい海を守る大切さを感じてもらおうと、海岸清掃をコースに組み入れている。海を怖がっていた小学生が約2時間の間に元気にパドルを繰り出し、ごみの話に真剣な表情で聞き入る姿に仕事のやりがいを感じ、「人を引きつける丹後の海をきれいにしたい」との思いを新たにする。年数回、海岸清掃イベントも開き、環境保全を訴える。

© 株式会社京都新聞社