「生きることからブレないで」40歳で乳がんが判明… 自身の経験踏まえ医療用ウィッグの新サービス開始

がんの治療などで髪を失った患者向けの医療用ウィッグ。その新たなサービスが、広がりを見せています。自身の経験を踏まえ、患者の不安を少しでも和らげたいと活動する女性を取材しました。

100%人の髪で作られた人毛ウイッグ。カラーやパーマも可能で、着用する人に合ったスタイルを提案できます。

KINEMA代表取締役・井門竜也さん
「人の髪を切るのと同じように切れると思うので、デザインが制限されることもなく、やりたい髪型を楽しめるかなと思う」

人毛ウィッグに、美容師の技術をプラスする新たな形の患者のサポートが広がっています。

このサービスを手掛けるSUMIKIL(スミキル)代表で、愛媛県鬼北町出身の野中美紀さん。姉が遺伝性の乳がんを発症したのを機に自身も検査を受けた9年前、40歳の時に乳がんと判明しました。

SUMILIL代表・野中美紀さん
「髪の毛が抜けたらどうなっちゃうんだろうとか、胸をなくすってどういうことなんだろうとかっていう、女性としての感覚や恐怖。見た目が変わっていく恐怖の方が強かった記憶がすごくあります」

野中さんは術後、ホルモン剤の投与で髪が抜け、人工の髪で出来たウィッグを使用したといいますが…

野中さん
「買ってかぶって、“無理”って言って捨てる、みたいな」

ただ、より自然な見た目の人毛ウイッグは、一般的に数十万円と高価な上、ウィッグのカットに対応する美容室はごくわずかです。

そこで野中さんは去年、会社を設立。各地の美容室と提携し、人毛ウィッグを一人一人に合わせカットして提供するサービスを始めました。

調達するウィッグをロングヘア1種類に絞るなどコストを抑え、カット代込で3万~4万円という手頃な価格を実現。東京から始めた活動は、ふるさと愛媛にも広がっています。

KINEMA代表取締役・井門竜也さん
「美容師をやっていて、治療によって髪が抜ける悩みは聞くんですけど、お手伝いすることが何もできなくて仕事しながら、無力感をずっと抱いていた。ヘアデザインから治療に対するポジティブな後押しになればと思うので」

野中さんは、自身の経験から生まれたこのウイッグが患者の不安をやわらげ、前向きに生きるきっかけになればと願います。

SUMIKIL代表・野中美紀さん
「髪の毛が無くなるのが嫌だから抗がん剤を避けるとか、胸を無くすのが嫌だから部分切除で終えてしまって再発してしまうことも少なからずあるので、まずは治療に、生きるっていうところからブレずに選択をしてもらいたい」

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