<レスリング>2023年U20世界選手権(ヨルダン)出場の女子チームが帰国

 

 ヨルダン・アンマンで行われたU20世界選手権に出場した女子チームが8月21日、成田空港に帰国した。6選手がメダルを取ったが、優勝1階級で、2019年と昨年の8階級制覇とは差ができてしまった結果。国別対抗得点の優勝も「10大会連続」で途切れた。

▲金メダル獲得の伝統は守った日本チーム=UWWサイトより

 正田絢子監督(京都・丹後緑風高教)は「星野(レイ=68kg級)がU20アジア選手権に続いて優勝したことはよかった」としながら、「もったいない試合がたくさんあった。相手がどうこうとか考えてしまう面があった。メンタル的な部分が問題」と、例年に比べて金メダルの数が少ない要因を分析。「勝ちたい」という気持ちだけでは勝てないことも指摘し、スタンドでポイントを取ってもグラウンドで返せないといった技術的な問題や体力面を挙げて、「ここを克服すれば、乗り越えられない壁ではない」と振り返った。

 この世代は、コロナ禍によって最も大きな影響を受けた世代。本来ならカデット(現U17)の世界選手権やアジア選手権、「クリッパン女子国際大会」(スウェーデン)で鍛えるべき時期に、遠征に行けなかった選手も少なくない。同監督は、その影響を否定はしなかったが、陸続きの欧州は他国の選手と切磋琢磨する機会が多く、「何がなんでも勝つ、という意気込みは、海外の選手が上だったと感じました」と言う。

 外国選手は、日本選手に勝つと大喜びとのこと。「日本選手に勝つことを目標にやっている。弱気なところを見せては駄目。一人一人が『強い日本』という意識をしっかり持ってもらわないと、この状況は越えられない」と、最後は“気持ち”の問題に戻り、「たら、れば、を言っても仕方ない。選手がしっかりやってくれることを期待し、それをサポートしたい」と話した。

▲メダル獲得選手。左から坂根海琉子(東京・丹後緑風高)、清岡もえ(育英大)、新井一花(育英大)、佐々木すず(中大)、星野レイ(東京・日体大桜華高)藤倉優花(育英大)

 齋藤ほのかコーチ(東京・安部学院高教)は、今月初めのU17世界選手権(トルコ)にも帯同し、「金6・銀2」を取った直後の遠征。明暗分かれた結果に直面し、「国別対抗得点の優勝が途切れたのは悔しい」と無念の気持ちを話した。内容的には、絶対に勝てない、という試合は少なかったそうで、「海外選手のハングリーさとかに負けてしまったのかな」と振り返る。

 決して若手世代の実力が足りないとは思っていない。「事故、と言ったら(相手に)失礼ですが、一瞬のすきを突かれるとかが多かった。日本では後半に投げ技をやってくる選手はそういません。外国選手は一発勝負をやってくる。こうしたことへの対応が必要と思います」と話した。


U23世界選手権・メダル獲得選手の声

 ■68kg級優勝・星野レイ(東京・日体大桜華高)「有言実行することができて、本当にうれしいです。ただ、決勝はぎりぎりの勝利で、もう少し(試合時間が)長ければ危なかった。もっと余裕のある試合をしないとならないです。準決勝までにも失点があり、満足とは言えませんが、勝てたことはよかったです。

 U20アジア選手権、インターハイで優勝して、この優勝と、徐々に力をつけていったと思い、誇りに思います。U20ではなく、もっと上の世界選手権の優勝を目指したいと思います。このあとは、全日本女子オープン選手権と全日本選手権が目標。全日本選手権の優勝を目指して頑張ります」

▲7月のU20アジア選手権に続いての優勝の星野レイ(東京・日体大桜華高)

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 ■57kg級2位・新井一花(育英大)「決勝はラスト15秒で逆転されました。タックルに入れると思って行ったのですが、ポイントを取れず、逆にビッグポイントを取られて悔しい負けでした。2点で押さえたかったのですが、海外の選手は力や勢いがすごく、力に負けてしまって4点を取られてしまいました。

 準決勝も、相手の力が強くてタックルを返されたりしました、決勝を含めて、外国選手の『絶対に取る』という気持ちの強さに負けていたと思います。課題がたくさん見つかりました。1週間後のインカレ(全日本学生選手権)前に課題を修正して臨みたい」

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 ■50kg級3位・坂根海琉子(東京・丹後緑風高)「今までの50kg級の選手は、ほとんど優勝できていた。準決勝で負けたときは、悔しいというより、恥ずかしいという思いが強かった。でも、銅メダルで、最低限の成績は残せたのでよかったかな、とは思います。

 負けたアメリカ戦は、最初2点を取って、逆転されたのですが、外国人特有のパワーにスタミナを奪われ、その時点でかなり体力が落ちていました。最後は取り切れなかった。表彰式に出たとき、隣に1位の選手がいて、金メダルやベルトが、とてもうらやましかった。来年も世界選手権の出場権を取って、絶対に優勝したいと思います」

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 ■55kg級3位・清岡もえ(育英大)「(準決勝の逆転フォール負けは)試合直後は、何が起こったか分からなかった。外国選手は、そういう技(カウンターの投げ技)でしか勝ちに来られないことは分かっていたのに…。(攻撃に)行こう、という気持ちが強くて、そのすきを突かれた感じです。自分の甘さが出たのだと思います。

 自分のレスリングで勝ちに行こうとしたことは、よかったと思うけど、やっぱり負けてしまっては意味がない。勝てなかったことは本当に悔しい。このあと、すぐインカレ(全日本学生選手権)があるので、そこでしっかりと優勝し、自信をつけて、シニアの舞台でも闘えるようにレベルアップしていきたい」

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 ■62kg級3位・佐々木すず(中大)「4月のクイーンズカップに勝って世界選手権出場を決めた時、サビタ(インド=昨年のU17世界選手権でフォール負け)が出てきたら、勝って優勝する、と言いましたが、負けてしまった。前半は相手のタックルにカウンターを決めたり、いい動きをしていたと思う。後半が始まって、相手の圧力に押され、試合の記憶がないくらいでした。

 勝った試合も含めて、ふだん練習していることができなかった。結果も内容も満足していない。とても悔しい。日ごろ、女子1人という状況の中で同期や先輩に鍛えてもらっているのに、恩返しできないことが申し訳ない。このあと、インカレ(全日本学生選手権)、国体、女子オープン選手権と続き、今年の締めで全日本選手権がある。すべて優勝は厳しいかもしれないけれど、優勝する、と決め、今まで以上に真摯に取り組みたい」

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 ■72kg級3位・藤倉優花(育英大)「メダルを獲得できてよかったです。(負けた相手の米国選手は昨年のU20・23・シニアの世界チャンピオン)ちょっと引いてしまった部分があって、自分の動きができませんでした。1,2試合目はできただけに、反省点ですが、できなかった、と言うより、させてもらえなかった。シニア・トップの実力を知ったのはプラスです。来年はU23世界選手権に出られるように頑張りたい」

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