花火大会の有料化、議論勃発 市民「見られないのおかしい」ロイヤル席「ランクあっていい」

来場者で混雑する有料観覧席のエリアに設けられた屋台村(亀岡市保津町)

 全観覧席が有料化されて京都府亀岡市で11日夜に開催された「保津川市民花火大会」では、チケットを購入した観客から「ゆったり見ることができる」と評価する意見が聞かれた。一方、有料エリア外で「経済状況に左右される」などの不満のほか、観覧席でも改善を求める声があった。周辺の住宅地や河川敷の路上駐車は対策強化が功を奏して激減したが、交通規制がなかった場所では道路に車がぎっしりと並んだ。

■最高額1万5千円「良い環境で楽しみたい」

 JR亀岡駅(亀岡市追分町)北側のエリアに設けられた約2万5千席の観覧席はほぼ完売した。打ち上げ場所に一番近くリクライニングシートのロイヤル席は最高額の1万5千円。同市千歳町に車を置いてバスで会場へ向かうパークアンドライド方式のため駐車場代3千円が別に必要だったが、約270席は全て埋まった。

 自営業久保坂左近さん(51)=京都市北区=は「有料席を知り、来ることに決めた。混雑した中で立って見るより、お金を出してでも良い環境で楽しみたい」と、家族3人でロイヤル席を取った。久保坂さんは「席にランクがあって良いと思うし、来年以降も続けてほしい」と語った。

 全席有料化は、昨年の終了直後に駅周辺で帰宅する観客が殺到して生じた混乱の対策から、来場者の抑制で導入した。市などでつくる実行委員会によると今年の人出は約8万人(速報値)で、昨年より2万人減少した。立ち見エリアにいた会社員(41)=大阪市=は「正直高くなったとは感じたが、ゆったり見られるし、混雑が軽減されたのは良い効果」と好意的に受け止めていた。

■「経済で左右おかしい」 「身障者用のトイレを」

 有料観覧席のエリア外だった駅南側や桂川(保津川)左岸・川東地域には観客が押し寄せた。駅南側で見物していたアルバイト女性(40)=南丹市園部町=は「有料だと経済的に見られる人と見られない人に分けられてしまう」と批判。入場には最低でも2千円が必要で、中学3年の男子(15)=亀岡市篠町=は「2千円は高い。市民が見られないのはおかしい」と語気を強めた。

 また有料化を知らずに訪れる外国人観光客もいた。警備員が日本語で退場を呼びかけても通じず、有料エリアのゲート前に立ち止まって花火を見る姿もあった。

 有料席の観客は、カメラ席やトイレについて改善を求めた。保津橋には、三脚が設置できる橋上カメラ席(1万5千円)が打ち上げ側の歩道に設けられた。観覧席に向かう通路になった車道に、観客が花火を見て立ち止まらないよう目隠しシートが設置され、シートを支える鉄パイプの一部が欄干に取り付けられたため、会社員の男性(46)=向日市=は「座席によっては鉄パイプがカメラの画角に入ってしまった。席に当たり外れがあるのは残念だ」と話した。

 会場内には仮設トイレが置かれたが、橋上カメラ席にいた身体障害者の会社員(63)=兵庫県芦屋市=は「近くに障害者用のトイレがなかった。よその花火大会では身体障害者向けの席もある。みんなが楽しめる花火大会にしてほしい」と注文を付けた。

■路上駐車、住宅地一掃も規制外に列

 保津川左岸にある亀岡市保津町の住宅地や河川敷は例年、路上駐車で埋め尽くされ、住民の悩みの種になっていた。今年は三角コーンをあちこちに置いて警備員が立ち、亀岡署もパトロールを強化した。駐車は激減し、住民の男性(72)は「対策が効いているのか、今年は車があまり来ない」と話した。

 しかし交通規制がなかった道には車がぎっしりと並び、テントを張ったりバーベキューをしたりする人もいた。同町の田んぼに囲まれた道から花火を楽しんだリハビリ師の男性(56)=大阪市=は「ここならチケットがなくても見られると、知人に連れてきてもらった。ごみは持ち帰って迷惑をかけないようにする」と話した。ただ翌日早朝には、車が並んでいた場所にたばこの吸い殻や空き缶などが落ちていた。

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