朝ご飯の子ども食堂、山形にオープン 黒田さん、長年の夢実現

「朝ご飯は大事なんだよ。また来てね」と利用客らに笑顔で声をかける黒田幸子さん(左から3人目)=山形市春日町

 朝ご飯を提供する子ども食堂が山形市春日町にオープンした。同市内で創作料理店を営む黒田幸子さん(57)=同市=が「シングルマザーで、自分の子どもが小さい頃、生活が苦しく朝食を用意できない日もあった。わが子にしてあげたかったことがやっとできた」と20年越しの夢を実現させた。栄養満点の朝食と、親子が向き合う時間をつくってあげたいと、食堂運営に励んでいる。

 店名は「大人の朝活&子どものための朝ごはん食堂すず」。初日の5日午前7時、親子連れなどが次々と入店してきた。地域の農家らが善意で寄せた食材で手作りした、ナスのみそ炒めや卵焼きなどの総菜、塩むすび、具だくさんのみそ汁が用意されていた。利用客は「おいしいね」「3人目が生まれたばかりで大変なのでありがたい」などと話し、味わった。

 黒田さんが子育て真っただ中だった頃、生活が苦しく、時間もなく、朝食を用意できない日もあったという。黒田さんは罪悪感で胸がいっぱいだったと振り返る。「自分のような家庭はほかにもあるだろう」。当時から自分の店で安く朝食を提供したいと考えていたが、店の収益を上げることと子育てで手いっぱいだった。

 子ども食堂の開店は、新型コロナウイルス禍が契機となった。黒田さんが経営する「味工房すず」の宴会客が減った分、朝の時間を活用しようと考えた。味工房の経営と子ども食堂の運営は切り離し、スタッフは自主的にボランティアで手伝っている。味工房で働く長男の悠馬さん(21)も「母を支えたい」と張り切り、子ども食堂に協力している。

 「家族を支える人が大変なのはよく分かる。私にできることをしてあげたい」と黒田さん。食堂は大人だけでも利用できる。「通学、通勤途中に寄っていい気分で一日をスタートしてほしい」と願う。

 8月は毎週土曜日の午前7時~同8時半まで。9月からは火曜日にも開く予定。料金は未就学児は無料、小学生100円、中学生200円、高校生以上300円。経済的に苦しい家庭の子どもは無料とする。問い合わせは黒田さん090(3756)7046。

子ども食堂 子どもに無料または低額で食事を提供する食堂。以前は子どもの貧困対策というイメージが強かった。現在は大人も受け入れる食堂が増えており、地域交流の場としての役割が強まっている。公益財団法人山新放送愛の事業団(理事長=寒河江浩二山形新聞会長・主筆)は、県内の子ども食堂運営団体に食材購入費の助成を行っている。

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