青森県と北海道・釧路市の絆 創立100年以上の県人会、青森市出身店主の居酒屋は開店半世紀

青森市出身の田鶴子さんが釧路市の繁華街で開いた「炉ばた津軽」で常連との会話に花を咲かせる娘の志鶴枝さん
釧路青森県人会会長の青山さん(旧中里町出身)と釧路市観光国際交流センターに飾られている立佞武多

 青森市から直線距離で約380キロ、北海道の東側にある港町・釧路市には、創立100年以上の「釧路青森県人会」のほか、半世紀近く釧路市民や県人に愛され続けた居酒屋がある。昨年、市内の公共施設に立佞武多(たちねぷた)を設置するなど青森県と釧路の交流が続いている。

「津軽色」でもてなし半世紀/居酒屋

 釧路駅から歩いて10分ほど、釧路市川上町の飲み屋街にある居酒屋「炉ばた津軽」は青森市出身の高橋田鶴子(たづこ)さん(79)と娘で釧路生まれの山口志鶴枝(しづえ)さん(59)の店。1300円で食べ放題の手料理が特徴で、約半世紀にわたり青森県出身者たちと釧路市民をもてなしている。

 志鶴枝さんによると、当時20歳前後だった田鶴子さんが親戚を訪ねた際に釧路を気に入り、1976(昭和51)年に釧路市内で「津軽」を開店。8年後に現在の場所に移った。釧路は炭火で魚などを焼く「炉端焼き」が有名。この店も当初は炉端焼きの店だったが、20周年を機に現在の食べ放題方式に変えた。2016年に志鶴枝さんがのれんを引き継ぎ、現在は1人で店に立つことが増えている。

 開店当初から日本酒は弘前市の「じょっぱり」のみ。ねぶたの鈴や金魚ねぷたなど津軽ゆかりのものが店内を彩る。席は5人がけほどの長椅子二つをL字形に並べたカウンターのみ。焼き魚や卵焼き、そうめん、きんぴらごぼうなど手作りの家庭料理が並ぶ。

 「妻がむつ市の生まれで」「何年か前に奥入瀬渓流に行きました」。青森県ゆかりの客も釧路市民も料理に手を伸ばしながら会話を楽しむ。志鶴枝さんは「名前のおかげで青森の人が多く来る。私も青森を愛しているから『津軽』の名でこれからも続けたい」と笑った。

創立100年 街に立佞武多飾る/県人会

 釧路市で食と花火を楽しむイベント「釧路大漁どんぱく」会場の一つ、釧路市観光国際交流センターに、昨年9月から高さ約6メートルの立佞武多(たちねぷた)が飾られている。2020年に創立100周年を迎えた、本県出身者らでつくる「釧路青森県人会」の手で五所川原市から運ばれた。

 飾っている立佞武多は本来、17年に五所川原市観光協会が開いた「立佞武多下絵コンテスト」の最優秀作品を基に、同市の立佞武多の館で飾っていたもの。旧中里町(現中泊町)出身で県人会会長の青山大作さん(81)が会創立100周年を盛り上げるために提供を依頼し、無償で譲り受けた。

 コロナ禍の影響で記念事業は2年延期したが、どんぱく期間の昨年9月上旬に合わせて運び出し、その後も交流センターの1階アトリウムに飾っている。今後もイベント時に合わせて明かりをつけ、釧路を盛り上げる予定だ。

 県人会は60人ほどが所属し、父が青森市出身という蝦名大也・釧路市長も名を連ねている。青山さんは「飾っているのは小型のもの。大きな立佞武多を見に、釧路の人には青森県へ足を運んでもらえれば」と話した。

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