【ミャンマー】ロヒンギャ難民帰還のめど立たず=人権団体[政治]

国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は20日付の声明で、バングラデシュで難民生活を送るミャンマー西部ラカイン州のイスラム教徒少数民族ロヒンギャが安全に帰還できるめどが立っていないと指摘。国連安全保障理事会が、人道犯罪や大量虐殺などミャンマー国軍によるロヒンギャ迫害の責任追及に失敗したためと批判している。

ミャンマーで迫害を受けたロヒンギャが2017年8月末に隣国バングラデシュに避難してから、既に6年が経過している。HRWでアジアを担当するシェイナ・バウフナー(Shayna Bauchner)研究員は、ミャンマー国内にとどまっているロヒンギャとバングラデシュで難民生活を送るロヒンギャはともに国籍さえ与えられず、移動の自由や教育など基本的な権利を奪われていると指摘。両国の当局による規制強化という名目の権利剥奪や治安の悪化に加え、安保理の消極的な姿勢と各国政府による援助削減により、ロヒンギャはますます絶望的な状況に追い込まれていると訴えた。

国連は、ロヒンギャ人道危機に対する2023年共同対応計画に関して、国際社会に8億7,600万米ドル(約1,276億円)の支援を訴えたが、集まった資金はこの3分の1以下にとどまっている。この資金不足が原因で、世界食糧計画(WFP)は2月、ロヒンギャへの食糧支援を従来の1カ月当たり12米ドルから8米ドルに削減。ロヒンギャ難民の生活に大きな影響が出ているという。

HRWは米国や欧州連合(EU)、英国、オーストラリアをはじめとする各国政府に、ロヒンギャへの支援を拡大するとともに、ロヒンギャ難民に対する規制を撤廃するようバングラデシュ政府に働きかけるよう求めた。

国連と国際社会に対しては、ロヒンギャ難民の安全な帰還や再定住を実現するため、ミャンマーの民政復帰などを支援するための協調行動を要請。国連安保理には、ロヒンギャ迫害に対する国軍の責任追及に加え、国軍幹部や関連企業に対する制裁発動、包括的な武器禁輸措置の発動、国際司法裁判所(ICJ)へのミャンマー問題の付託など断固たる措置を取るよう要求した。

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