日本酒、もっと自由に ミント入り食前酒、果汁と冷やしかき氷風 滋賀の蔵元が知恵絞る

滋賀の酒蔵が、清酒の新しい飲み方を提案した商談会(京都市左京区・みやこめっせ)

 清酒の国内市場が縮小する中、滋賀県酒造組合(大津市)が和食と合わせる伝統的な形にとらわれない自由な飲み方を通じ、客層を広げようとしている。このほど京都市内で試飲商談会を開き、ミントを加えた食前酒や凍らせたデザートなど、それぞれの酒蔵が知恵を絞った商品を飲食事業者らに提供した。

 先月26日にみやこめっせ(左京区)であった初の商談会「一献献上(いっこんけんじょう)」は、同組合に所属する全31の酒蔵が出展ブースを設けた。和食のほか中華、フランス、ラオスなどさまざまな料理店の事業者や卸、小売関係者ら全国から約300業者が参加した。

 喜多酒蔵(東近江市池田町)はミントの葉を添えた食前酒や、シナモン入りのかん酒を提供。喜多麻優子専務(33)は「香りを付けることで合わせる料理の幅が広がる。リラックスタイムに甘い物と一緒に楽しむこともできる」と来場者に提案した。

 他の蔵も、マンゴーやユズの果汁と一緒に冷やしてかき氷のように仕上げたり、濃厚な銘柄をピクルスや湖魚の燻製(くんせい)と合わせて白ワインのように味わってもらったりと、販路拡大に向けて工夫を凝らした。彦根市内で近江牛のコース料理の店を営む男性(33)は「肉の味に負けない、深いうま味がある酒を探しに来た。飲み比べて店で出したい」とし、各蔵の説明に熱心に耳を傾けていた。

 若者の清酒離れを受け、市場は縮小傾向にある。国税庁によると、県内からの出荷量は2017年度時点で1962キロリットルと、20年間で6割減った。近年は新型コロナウイルス禍による飲食業の不振が追い打ちをかけている。

 同組合は、今回の商談会のほか、2年前から滋賀の地酒をベースにした創作カクテルの魅力を競うコンテストも毎年開き、新たな魅力を発信する。昨春には滋賀の清酒について、ブランドを保護する国の地理的表示(GI)制度の指定を受けた。国の「お墨付き」を得て海外輸出を拡大することが狙いで、「和食以外とのマッチングをさらにPRする必要がある」(組合事務局)ともくろむ。

 松瀬酒蔵(竜王町)社長の松瀬忠幸副組合長は「清酒は本来、柔軟性が高い飲み物。われわれ作り手の方に固定観念があったのかもしれない。滋賀に多い小規模な蔵による手作りの味の優しさ、穏やかさを幅広い料理に生かしてもらえるように組合一丸で取り組みたい」と話す。

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