「蘇州夜曲」の渡辺はま子が歌った幻の未発表曲「あの日のわたし」が85年ぶりに発掘

「蘇州夜曲」「愛国の花」などのヒットで知られる、歌手・渡辺はま子。1938年(昭和13年)に録音したものの発売されなかった幻の音源「あの日のわたし」がこのたび発見され、本日8月23日(水)に発売されたアルバム『渡辺はま子の世界~蘇州夜曲』に収録されることが分かった。

渡辺はま子は1933年(昭和8年)に歌手デビュー。1937年(昭和12年)にコロムビアに移籍。 翌1938年(昭和13年)には古関裕而作曲の「愛国の花」が大ヒットする。同年発売の「シナの夜」、1939年(昭和14年)発売の「広東ブルース」「いとしあの星」、1940年(昭和15年)発売の「蘇州夜曲」の大ヒットにより“チャイナ・メロディーの女王”と呼ばれるようになる。 今回発見された「あの日のわたし」は作詩・野村俊夫、作曲・江口夜詩の作品で、カップリングに収録された佐々木章の「地震・雷・火事・女房」が時局に合わず内務省から発売禁止対象となったため、その余波で発売されなかった。「あの日のわたし」の音源はレコード会社にも残されておらず、今回のアルバムを監修した日本大学の刑部芳則教授が、作曲した江口夜詩のお孫さん宅の史料群の中から、レコード店頭等での試聴用に作られた見本盤を発見した。

刑部芳則教授(日本大学)コメント

渡辺はま子「あの日のわたし」は、発売中止となったため、これまで聴くことのできない幻の曲でした。今回、奇跡的に見本盤のレコードが見つかりました。

『渡辺はま子の世界』のCDに収録されて、多くの人たちに聴いていただくことができるようになったことを嬉しく思います。

また、渡辺はま子の「蘇州夜曲」をはじめ、ブギの女王・笠置シヅ子の「東京ブギウギ」、ブルースの女王・淡谷のり子の「別れのブルース」などの作品を作曲した服部良一の作品を集めたアルバム『服部良一の世界~青い山脈』も同時発売される。

▲渡辺はま子

【渡辺はま子 プロフィール】

明治43(1910)年10月27日~平成11(1999)年12月31日

歌手。横浜市出身。

武蔵野音楽学校卒業後、女学校の音楽教師をしながら、昭和8(1933)年にポリドールよりレコードデビュー。昭和10(1935)年秋には教職を辞め、本格的にビクターからデビューし、歌手に専念することとなる。

昭和12(1937)年にコロムビアへ移籍し、翌昭和13(1938)年には国民歌謡で前年に放送発表した「愛国の花」がレコード発売されヒット。

「シナの夜」「広東ブルース」「蘇州夜曲」など中国を題材にした曲を多くヒットさせて“チャイナ・メロディーの女王”として君臨した。

戦地慰問で訪ねていた天津で終戦を迎え、10ヵ月間の捕虜生活を送った後、昭和21(1946)年5月に帰国。その後、古巣のビクターに復帰して「桑港のチャイナ街」「あゝモンテンルパの夜は更けて」などのヒットを放った。

その後も懐メロ番組などに出演して長く活躍を続け、平成元(1989)年に歌手を引退。

平成11(1999)年12月31日、89歳で死去。

笠置シヅ子とは戦前から戦中にかけて、専属歌手として同じコロムビアに在籍。

戦後は渡辺がビクターに移籍したが、渡辺は“チャイナ・メロディーの女王”、笠置は“ブギの女王”として、それぞれの持ち味を生かして活躍した。

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