「女性管理職30%以上」達成企業は11.9%と低水準 女性が活躍する企業では職場環境改善・定着力アップに効果

~ 2023年「女性管理職に関するアンケート」調査 ~

東京商工リサーチが実施したアンケートでは、「女性管理職」が30%以上の企業は11.9%にとどまった。2003年の目標設定から20年が経過したが、女性管理職の割合は依然として低水準から抜け出せずにいる。政府は、2003年に掲げた「2020年までに指導的地位(課長相当職以上)の女性比率を30%にする」という目標達成を断念、2020年に「第5次男女共同参画基本計画」を策定した。新たに2020年代の可能な限り早期に、指導的地位に占める女性の割合が30%程度となるよう取り組むとしたが、計画に遠く届かない水準にあることがわかった。

「女性管理職30%以上」と回答した企業が5割を超えた業種は、「社会保険・社会福祉・介護事業」(65.2%)のみだった。上位6業種以外は構成比が3割に満たず、幅広い業種で女性管理職の登用が進んでいない。規模別では、女性管理職が「いる」企業は、大企業が67.2%に対し、中小企業は52.3%と規模を問わず半数を超えた。だが、「女性管理職30%以上」は中小企業12.8%に対し、大企業はわずか3.9%にとどまり、大企業ほど女性管理職の登用が低い実態が浮き彫りになった。

女性管理職の配置による変化は、「変化はない」が半数以上(構成比57.8%)を占めた。ただ、女性管理職の登用で社内コミュニケーションが円滑になったり、職場環境の改善、社員の定着力アップに効果が出たと感じる企業も少なくない。特に、2024年問題を控えて人手不足が深刻化する運輸業では「変化はない」が半数を切り、効果を感じる回答が多かった。

女性活躍推進法に基づき、2023年3月決算から従業員数301人以上の上場企業は、有価証券報告書での女性管理職比率、男性の育児休業取得率、男女の賃金の差異などの公表が義務付けられた。
少子高齢化が進み、労働人口の減少時代を迎えている。男女を問わず優秀な人材の採用を促すためにも、業務効率化による生産性の向上、性別を問わず働きやすい職場環境の整備が欠かせない。
ライフステージの影響を受けやすい女性の管理職割合は、ワークライフバランスなど「働きやすさ」を反映する指標になる。多様性を確保する事業改革の推進は、人手不足などの経営課題に対し実利的な成果をもたらす施策でもある。目標の早期実現には政府の幅広い支援と同時に、企業の意識改革も問われている。

※本調査は2023年8月1日~8月9日にインターネットによるアンケート調査を実施。有効回答5,425社を集計し、分析した。
※資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。


Q1. 貴社には女性管理職(課長級以上、役員含む)はいますか?

女性管理職の「いる」企業は54.1%
各企業の女性管理職の有無は、「いる」が54.1%(2,935社)と半数を超えたが、「いない」と回答した企業 も45.8%(2,490社)で、ほぼ拮抗した。
女性管理職が「いる」企業の規模別では、大企業が67.2%(430社)に対し、中小企業が52.3%(2,505社)で、大企業が14.9ポイント上回り、女性管理職の登用は大企業が進んでいる。
地区別では、北陸が61.9%(101社)でトップ。次いで、四国が61.1%(123社)で続く。
都道府県別では、徳島県が73.3%(30社中、22社)でトップだった。徳島県は基準の厳しい「プラチナくるみん」認定企業の割合が、従業員が50人以上で資本金・出資金3,000万円以上の企業のうち4.5%。全国平均の1.0%と比べ、非常に取得率が高い(厚生労働省、総務省より)。

Q2. 貴社の女性管理職(課長級以上、役員含む)の割合は何%ですか?(小数点第一位まで)

従業員数が多い大企業ほど女性管理職30%以上の構成比は低い
女性管理職の割合が30%以上と回答した企業は11.9%(555社)で、全体の1割にとどまった。女性管理職が「いる」企業は54.1%と過半数を上回ったが、各企業の女性管理職の割合は1割程度と低い水準にとどまる。
規模別の「女性管理職30%以上」の構成比は、中小企業が12.8%(537社)に対し、大企業がわずか3.9%(18社)にとどまり、8.9ポイントの開きがあった。
従業員数別では、「5人未満」が20.4%(96社)、「5人以上10人未満」が21.8%と2割を超えたが、「50人以上300人未満」は4.7%(62社)、「300人以上」は7.9%(15社)と1割を下回った。
従業員数が少なく、企業規模が小さい発展途上の企業は、事業拡大で管理職ポストを増やしたり、1人や数人の昇格で女性管理職の割合は上がりやすい。
一方、規模が大きく従業員数が多い企業は、大きく女性割合を高めるには相応の人数を登用する必要があり、スピード感のある対応は難しい。管理職ポストの多い大企業ほど女性管理職が「いる」構成比は高いが、割合を高めるのは容易ではない。

産業別構成比トップは不動産業が24.1%

産業別では、構成比のトップは不動産業で24.1%(21社)だった。10産業のうち、唯一構成比が2割を超えた。次いで、サービス業他が17.4%(133社)、農・林・漁・鉱業(5社)と小売業(35社)が各16.6%で続く。
一方、構成比が1割を下回ったのは、「金融・保険業」7.6%、「建設業」8.0%、「製造業」9.9%、「運輸業」9.9%の4産業だった。最低は金融・保険業で、女性が営業職として働く割合が高い産業だが、管理職に占める女性の割合は低いことが明らかになった。

業種別 女性管理職30%以上 「社会保険・社会福祉・介護事業」が唯一の過半数超え

業種別の「女性管理職30%以上」(回答母数10社以上)は、最高が「社会保険・社会福祉・介護事業」で65.2%(15社)と、唯一5割を超えた。次いで、「医療業」が44.4%(8社)で続く。福祉や医療業界はもともと女性が多く、女性管理職の割合も高いとみられる。
「女性管理職30%以上」の上位業種は、各種サービス業が中心だが、上位6業種以外では構成比が3割を下回り、幅広い業種で女性管理職の登用が進まない実態が浮き彫りになった。
一方、「鉄鋼業」「木材・木製品製造業」「非鉄金属製造業」の3業種では、管理職の女性割合を回答した企業のすべてが「女性管理職30%未満」だった。
「女性管理職30%未満」の上位は製造業が圧倒的に多く、上位15位中9業種を占めた。

Q3. Q1で「いる」と回答された方に伺います。女性管理職の配置による変化は次のどれですか?(複数回答)

「変化はない」が57.8%、次いで「社内コミュニケーションが活性化した」が27.5%
女性管理職の配置による変化について、「変化はない」が57.8%(1,576社)で約6割を占めた。女性管理職の割合が10%未満の企業が多く、女性管理職の影響を企業全体で実感しにくいことが背景にあると思われる。
何らかの変化があったという回答では、最多が「社内コミュニケーションが活性化した」が27.5%(750社)でトップ。次いで、「女性従業員の定着率が向上した」が14.0%(384社)、「商品・サービスの提供・開発での視野が広がった」が9.9%(270社)と続く。

周囲への気配りや共感する能力を発揮することで、社内コミュニケーションを円滑にし、職場環境の改善、社員の定着率が上がることが女性管理職ならではの大きなメリットととらえる企業が多くみられた。職場での働き方や働きやすさ向上に貢献する女性管理職が多いようだ。
その他の意見では、「出産の際に退職ではなく産休を取る社員の割合が増えた」、「社員(特に女性)のモチベーションが向上した」などの意見がみられた。
産業別で特徴的だったのは運輸業で、「変化はない」が唯一50%を下回る(49.6%)。「社内コミュニケーションが活性化した」が34.4%(43社)と10産業の中で最も高かった。女性社員割合が低い産業だが、女性管理職による職場環境の改善に好影響を受けた企業が多いようだ。

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