社説:タリバンの2年 女性抑圧を即刻改めよ

 国内外の懸念がことごとく過酷な現実となっている状況を憂う。

 アフガニスタンでイスラム主義組織タリバンが、復権してから丸2年がたった。

 暫定政権は独善性を深め、女性の権利の制限を強めている。国際的な批判から孤立が続き、経済と国民生活の厳しさが増している。

 人権侵害を改めねば、国内の安定と国際協調の道が開けないことを自覚すべきである。

 タリバンは一昨年8月、駐留米軍の撤収に乗じて首都カブールを制圧、約20年ぶりに全権を掌握した。当初は、多様な勢力の「包括的な政権」を作り、女性の権利を尊重するとして融和的な姿勢を示した。だが、暫定政権はタリバン中核メンバーで固め、旧政権時代の恐怖政治に回帰している。

 際立つのが、極端に解釈したイスラム法に基づく女性の教育や就労の制限だ。女性は原則小学校しか通えず、日本の中学・高校に当たる中等教育に加え、昨年12月に大学教育も停止された。国連と非政府組織(NGO)の女性職員も出勤が禁じられ、先月には国内の美容院の閉鎖が命じられた。

 いかなる政治体制でも、基本的人権と男女同権は守られるべき普遍的価値だ。国連の再三の批判も受け入れられず、暫定政権を承認した国はこれまで一つもない。

 長い内戦で疲弊したアフガンは、以前から国際支援に多くを頼ってきた。だが、対外資産の凍結など制裁が続き、人道援助を除く各国支援が停止しているため財政難と困窮が深刻化している。世界食糧計画(WFP)は、人口の3分の1以上の1530万人が今年10月にかけ「深刻な食料危機に陥る」と危惧している。

 人々と国の未来を奪わないよう、女性の権利と市民的自由の抑圧を即刻やめるべきだ。

 暫定政権内でも女子中等教育の再開論はあるが、最高指導者アクンザダ師をはじめ強硬派の意向から実現していない。内部の対立と国民の反発による混乱も危ぶまれる。

 タリバンが米軍撤退時に約束したテロ組織との断交も守られていない。今年6月の国連報告書によると、国際テロ組織アルカイダとの関係を維持しているほか約20組織が活動している。再び「テロの温床」に戻る懸念が拭えない。

 日本はアフガン復興援助で中心的役割を果たしてきた。抜本的な状況改善をタリバン政権に粘り強く働きかけ、国際社会とともに人道支援に手を尽くしたい。

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