ピアノでどうしても弾けない難しい曲に出合ったら?マスターする方法とは【榎政則の音楽のドアをノックしよう♪】

ピアノを続けていると、「こんな曲どうやって練習すればいいの!?」と思うような難しい曲に出合うことがあります。楽譜をいくら読んでも正しい音かどうかもわからず途方にくれてしまった経験がある方も多いのではないでしょうか。 そんなときの心構えや、実際に取り組む方法をお伝えします。

難しい曲を練習するときの鉄則2つ

難しい曲の練習方法は、次の2つに尽きます。 ①ゆっくりと練習する ②細分化して練習する

とくに「①ゆっくりと練習する」は皆さんもすでに実践されていると思うのですが、これについて今一度考えてみましょう。

⇒ピアニストはなぜ両手をバラバラに動かせるのか? 「両手でピアノを弾くコツ」を解説

ゆっくり練習の意味は「音の確認」と「身体の動きの確認」

どんなに難しい曲でも極端に速度を落とせば必ず弾くことができます。しかし、1小節を弾くのに10分もかかってしまったら、練習のモチベーションを保つことは難しいですし、速度を上げることができなかったら曲を完成させることはできません。

改めて、なぜ「ゆっくりと練習する」のかを考えてみましょう。

1.「音の確認」のため

取り組んでいる曲が実際にどのような音なのか、自分の手で鳴らすことによって、ただ曲を聞いているときよりも、細かく正確に把握することができます。このときの練習のポイントは、「正しい鍵盤の上に指を置いて(触れさせて)から弾く」ということです。

音を鳴らす前に、指が本当に正しい位置にあるのか?ということを確認してみてください。はじめのうちは楽譜と指の間を視線が何往復もすることになるかもしれませんが、慣れてくると白鍵と黒鍵の感覚で正しい鍵盤に触れているかがわかるようになってきます。リズムが崩れても、どんなに遅くなってもかまいません。「絶対に間違った音は鳴らさない」という覚悟で練習してみましょう。

この「正しい鍵盤の上に指を置いてから弾く」は、ピアノの音色の改善にも役に立ちます。ピアノは「叩きつけるように弾く」より、「重さをかけるように弾く」ほうが音色が安定します。この動きに慣れると、速くて難しい、いわゆる「超絶技巧」のような曲でも、ミスタッチをすること無く、良い音色で演奏することができるようになります。0.1秒でもよいので、正しい鍵盤に触れた感覚を掴んでから弾くという意識をすることが大切です。

また、「音の確認」には「リズムの確認」も含まれます。複雑なリズムも、「この音は、どの音とどの音の間に入るのだろうか」と考えることによって、ゆっくりと練習することができます。

2.「身体の動きの確認」のため

音がわかったら、身体の動きを確認していきます。複雑な和音を弾く必要がある場合は、その和音の手の形を覚える、というのも身体の動きの確認ですが、大切なのは、「フレーズ」(ひとつながりのメロディーライン)をどのように弾くのが自然かを確認することです。

ピアノを演奏する際の「ぎこちない動き」が無くならないと悩んでいる方は多いと思います。その多くが、一つ一つの音を弾くことに集中してしまい、繋がりになかなか意識を向けられていないからです。音と音の間でも手は自然な動きを続け、ひとつながりの動きの中でフレーズを演奏できるように意識してみましょう。そのために必要な指使いや、身体の重心の位置を確認していきましょう。

この練習をするときは、音を間違えてしまったら、その音から弾きなおすのではなく、その前の音から弾きなおすことが大切です。そのフレーズを始めから弾きなおすのが理想ですが、フレーズがどこから始まるのか分かりにくい場合や、何度練習してもフレーズが弾けない場合は、その一つ前の音からでも構いません。

間違えた音を何度も弾きなおすのは練習にはなりません。その前の音から、その後の音にどのように繋がっていくのかを確認してみてください。上達速度が段違いにアップしますよ。

細分化練習の意味は「構造の把握」「反復練習」

次に細分化練習の意味を確認していきましょう。細分化とは、1曲通して練習するのではなく、小節毎にくぎって練習したり、右手と左手を分けて練習したりすることにあります。

それらも何も考えずに行うより、意味が分かった上で行うと、爆発的に上達することができるようになります。

この細分化練習も2つに分けて見ていきましょう。

1.「構造の把握」のため

音楽はよく「縦の構造」と「横の構造」という言われ方をします。

「縦の構造」とは、旋律と、バス(ベース・その和音の中の最低音)と、内声(旋律でもバスでもない和音を構成している音)のように、同時に鳴っているそれぞれの音の役割のことです。

ピアノの難しさであり、魅力にもなっているのは、一人でこの全ての「縦の構造」を演奏することができる点です。

「横の構造」とは、前奏・Aパート・Bパート・間奏といったような、楽曲構成のことです。長い曲でも、この構造がわかると見通しが良くなります。

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