〈大相撲氷見場所〉唐戸山大関そろい踏み 地元11人、化粧まわし披露

化粧まわしを披露する唐戸山相撲の大関。左から根山さん、西山さん、宮下さん、中林さん=氷見市内

  ●開催の喜び、相撲甚句に

 27日に氷見市ふれあいスポーツセンターで行われる大相撲氷見場所(富山新聞社、北國新聞社主催)で、2千年の伝統を持つ唐戸山神事相撲(羽咋市)の氷見在住大関11人が集まり、華やかな化粧まわしを披露する。越中の「親方」として相撲どころの氷見を支えてきた11人は、38年ぶりの地方巡業で巡ってきた晴れ舞台に意気込んでいる。

 氷見場所独自の余興として企画された。氷見市は唐戸山神事相撲の大関が1879(明治12)年以降、45人を数え、市相撲協会が1980年以降の大関に呼び掛けた。当日は7人が力士として化粧まわしを着け、協会顧問の4人が服を着て、行司1人とともに入場。土俵前にそろい自慢の化粧まわしを観衆に披露する。

 市相撲協会顧問で大関「御林山」の根山敏弘さん(67)=鞍骨=の化粧まわしは、富山県出身の元関脇琴ケ梅が着けたもので、立山と梅が刺繍(ししゅう)で描かれている。根山さんは「38年前の氷見巡業は会社を休んで土俵作りを手伝った。こんな形で再び参加できてうれしい」と喜ぶ。

 化粧まわしは大関の後援会が角界のつてをたどって譲り受け、力士に贈る。協会監事で「西乃里」の西山茂也さん(61)=熊無=は「化粧まわしを着けるのは自分の花相撲以来で、くすぐったいような気持ち。もう少し鍛えておけばよかったかな」と苦笑いしながらも心待ちにする。

 「光信山」の中林秀和さん(51)=海津=の化粧まわしは、同じ集落に住む先輩大関から譲り受け手直しした。海津は20軒弱ながら大関4人を出した相撲の盛んな土地。中林さんは「38年前に世話方を務めた父に、自分の姿を見せられるのがうれしい」と笑顔を見せた。

 協会理事長で「光風」の宮下幸則さん(56)=万尾=は元大関琴風の化粧まわしを着ける。宮下さんの父幸光さんは38年前の勧進元で親交があり譲り受けた。馬簾(ばれん)と呼ばれる下飾りは大関横綱しか許されない紫色で値打ちがあるという。

 根山さんと西山さんの2人は相撲甚句も披露する。氷見場所開催の喜びや氷見の名所を題材にした甚句を準備するのど自慢2人は「約4千人の前で歌うことに身が引き締まる思い」と力を込めた。

 氷見市で化粧まわし披露は大関誕生の祝賀相撲や祝賀会に限り行われてきた。宮下さんは「11人の大関が一度にそろうのは最後のチャンスかもしれない。気合が入る」と話した。

 ★唐戸山神事相撲 羽咋神社(羽咋市)の祭神が相撲好きだったとの言い伝えに基づき、9月25日に行われる。越中と加賀方面の「上山」、能登方面の「下山」に分け、力自慢が集まる。「塩なし、水なし、待ったなし」で知られる素朴な相撲の形を今に伝える。石川県無形民俗文化財。

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