夏の終わり…

 グレーの上下にローマ字の胸マーク、ストッキングには赤と白のライン。夏の全国高校野球、決勝戦を戦った慶応高(神奈川)と仙台育英高(宮城)はユニホームの感じが少し似ていた▲もう一つ共通していたのはプレー中の笑顔だ。試合は予想外に点差が開いたが、リードした慶応も追う仙台育英も、打席やマウンドの選手が時折見せる白い歯が印象的だった▲107年ぶりの快挙-は当事者たちに無関係な学校の歴史の古さだからひとまず措(お)くが、優勝した慶応は“非丸刈り”の自由な頭髪や「エンジョイ」のスローガンも話題を呼んだ。「真剣」と「深刻」は大違い、スポーツは楽しくやるもの、という基本を再認識させてくれた▲決勝戦のゲームセットから約2時間後、将棋の王位戦7番勝負第5局で佐々木大地七段=対馬市出身=が静かに駒を投じた。大駒を切って自玉の危機を逃れ、佐々木玉に厳しく迫る藤井聡太七冠の絶妙手を受け、次の手を指さずに美しい投了図をつくった▲棋聖戦から続いた2人の“夏の12番勝負”は悔しい結果に終わったが、佐々木さんは「たくさんの応援をいただき、棋士冥利(みょうり)に尽きる時間だった。またこの舞台に戻って来られるように」と決意を新たに▲8月の終わりが近づいている。暑さだけがなかなか去ってくれない。(智)

© 株式会社長崎新聞社