【竜星涼】岸優太の魅力を語る「みんながツッコめる主役って素敵」映画『Gメン』インタビュー

撮影/稲澤朝博

岸優太主演の青春エンターテインメント映画『Gメン』が8月25日(金)よりいよいよ全国公開される。

「彼女を作る」という理由で、“彼女できる率120%”という噂の「私立武華男子高校」に転校してきた高校1年生の門松勝太(岸)が、問題児集団の「G組」の仲間たちと、時にケンカもしながら絆を深めていく物語。

竜星涼が演じるのは、武華男子高校では成績トップクラスのA組のエリートだったが、ある理由からG組に降格することになった瀬名拓美。文武両道で性格も良い超絶イケメンなのだが、竜星が加えたスパイスによってとても味わい深いキャラクターとなっている。

サービス精神満載で、全ての発言のあとに(笑)と付けたくなるようなトークで、場を和ませながらインタビューに答えてくれた竜星が、強い信頼関係を伺わせる瑠東東一郎監督とのエピソードや、その「才能」を称える主演・岸優太とのやり取りなどを明かしてくれた。

イケメンってところはだけはシンクロしていたかな(笑)

撮影/稲澤朝博

――瀬名は“武華のプリンス”の異名をとる美男子というキャラクターですよね。

僕としては久々の二枚目キャラだったので、ここからいろんなところに「二枚目の演技もできるんだぞ」ということをアピールしていく作品だと思っています(笑)。

――ただ竜星さんの演じた瀬名は二枚目ではあるんですけど……。

あははは(笑)。だからそこが(監督の)瑠東(東一郎)さんが僕を選んだ理由なんでしょうね。二枚目だけでは終わらないという。原作よりもちょっと膨らんでしまいましたね。2.5枚目くらいの感じで演じさせてもらいました(笑)。

――役作りはどのようにしていきましたか。

原作では誰に対しても熱く、優しさと思いやりのある人ですけど、それだけだとなんか人間っぽくないなと感じて。瀬名は一つ、人には隠したいところとして、女性に対しての弱みみたいな部分は持っていますけど、さらにもう一つ欲しかったので、天然という要素を加えさせてもらいました。

他のキャラクターが原作からすごく出来上がっているものを、さらに今回のキャストの方々がいい具合に作ってきていたので、その弱みだけだと、瀬名のキャラクターが弱くなっちゃうと思って。

みんなで一緒に作っていくようなコメディ作品でもあったので、「イケメンだけだと……」という感じで、ちょっとやりたくなっちゃいましたね。欲が出ちゃいました(笑)。

©2023「Gメン」製作委員会 ©小沢としお(秋田書店)2015

――竜星さんからの提案であのようなキャラクターになったのですか。

少し肉付けをしたいという話を瑠東さんにして、キャラクター設定も含めて何回か話しながら、脚本が何度か改訂されていくなかで今の形に至りました。

――その加えられた天然ぶりが最高に笑えました。

どこをどうつまみ取られるかは、僕も編集をされたものを確認するまではわからなかったんです。そのくらい長回しをしながら、「これは前後の繋がりとかは関係ない世界なんだろうな」って思いながら撮影していました(笑)。

――竜星さんと瀬名はどのくらいシンクロしていましたか。

イケメンってところはだけはシンクロしていたかな(笑)。

――(笑)。

笑われるってことは違うってことですね(笑)。現場では毎日、かつらを付けて、鏡を見て「今日は行けるかな?」「ちょっとキツイな」「いや、行ける」「行ける!行ける!」って自問自答を繰り返して。

それで(肝田茂樹役の)矢本悠馬に「今日、大丈夫かな?」って聞くと「全然ダメだよ、おっさんだもん」って言われるという(笑)。けど、(伊達薫役の)高良健吾さんも(八神紅一役の)田中圭さんも、僕より年上なのに学生服を着ていると思って、そこに勇気をもらいながらやっていました。まだ学生服を着られるってことは、ありがたいと思います。

「岸優太をどれだけ困らせるか」をお願いされました

撮影/稲澤朝博

――G組の教室でのシーンはアドリブ合戦のようだったとか。

僕はそのシーンではまだG組のメンバーではなかったんですけど、矢本悠馬を筆頭に、みんながやりたいようにやっていたとは聞きました。今回は現場で面白いものを出せた人が結果として使われるという感じだったので、戦場のようでした(笑)。誰が目立つかという戦場です。

僕は特に特に岸くんと一緒のときは率先して入れていました。同じセリフを言いながら、段取り、テスト、本番と全部違うことをしていました。

©2023「Gメン」製作委員会 ©小沢としお(秋田書店)2015

――G組メンバーが集まったときの雰囲気はどうでしたか。

この作品の一番いいところでもある、愛すべき熱くて真っ直ぐな男たちのくだらない会話を、カメラが回っていなくてもしていました。男子高校生ノリというか。本当にくだらない内容で、基本、最終的には下ネタになっちゃうみたいな(笑)。そういう話を永遠としていました。

けどそれができていたことが良かったところで。その雰囲気があったからこそ、こういう作品が出来上がったんだと思います。そこは他のヤンキー映画とは違うところじゃないかと思います。

――撮影初日からそんな雰囲気だったのでしょうか。

撮影の前に、みんなで集まってワークショップのようなものをしたんです。(薙竜二役の)りんたろー。さんは参加できなかったんですけど、その時点で意気投合していました。

そのとき、仕事を理由に“サボった”(笑)りんたろー。さんの代わりに、僕が代役で薙をやったんですけど、声を潰すくらい本気でやって。矢本悠馬から「今までの竜星で一番面白い芝居だった」とも言われて、二役をやる気持ちだったので、そんな薙を演じられなくて残念です(笑)。

撮影/稲澤朝博

――瑠東監督とはこれまでも何度かご一緒していると思いますが、今回の現場はいかがでしたか。

今回は「岸優太をどれだけ困らせるか」をお願いされました。だから、段取り、テスト、本番と全部違うことをやって、それに対する岸くんのリアクションを監督と僕は楽しんでいました。

監督の中に、岸くんには固まったものをやらせるよりも、自由に泳がせた方が面白いものが出てくるという想いがあっての、僕への指示だったとは思うんですけど、岸くんは困ったでしょうね(笑)。

けど、その困りながらも一生懸命に出してくるものが天性のワードチョイスで、面白いんです。計算じゃないのがうらやましい。素で笑っちゃうことも多かったんですけど、そこを(本編に)使うところも瑠東さんらしさでもありますよね。

――岸さんはなかなかカットがかからないので、「早くカットをかけてくれ」とずっと思いながらやっていたとか。

カットがかからない以上やり続けなければならないということを、僕は楽しめるタイプなんですけど、岸くんは困っていましたね。

その岸くんが困っている顔を見ながら、僕もリアクションをするんですけど、それに対する岸くんの返しが、また僕が想像するものと180度くらい違って。「おう! そう来るか」って、逆にびっくりされられる。そこが岸くんの面白いところです。

意外と普通に自分のキスシーンが見れた(笑)

撮影/稲澤朝博

――本作の見どころの一つでもあるアクションシーンはどうでしたか。

岸くんは本当にすごく瞬発力があって動けるんです。普段、ダンスをやっているからかもしれませんが。

アクションシーンの撮影時に監督と最初にどのくらいのスピード感でやるかを話し合ったんですけど、結構なスピードでやることになって。岸くんはそこに食らいついていける才能があったので、こちらも気負いなくやらせてもらえました。

――竜星さん自身はいかがでしたか。

僕はヒーロー(『獣電戦隊キョウリュウジャー』)をやっていたときの名残があるのか、わりと1回見たら覚えられるんですよね。当時は現場で覚えて、その場で本番をやるみたいな感じだったので。

でも岸くんもすぐに覚えていました。振付と一緒なのかもしれないですね。その瞬発力はアクションだけでなくお芝居にも絶対に必要だと思うので、すごい才能だと思います。

©2023「Gメン」製作委員会 ©小沢としお(秋田書店)2015

――瀬名のアクションシーンは純粋に二枚目でカッコ良かったです。竜星さんのスタイルの良さが際立っていました。

瀬名のアクションは蹴りを重視していました。泥臭くというよりはスマートに。それぞれのキャラクターによってアクションにも違いがあって、そこはアクション監督がいろいろと考えてくださいました。

――クライマックスの大人数でのアクションシーンは、スケジュールの都合上、撮影期間が空いて、久々にキャストの皆さんが再会する現場でもあったそうですね。

そうなんです。そのシーンのアクション練習で久々に会いました。けど、ブランクみたいなものは感じなくて、一度、同級生みたいな関係性になったら、簡単なことでそれが解けることはなかったです。

ただいざ撮影になったら、僕はあのかつらをかぶるじゃないですか。自分の中で「しっくりこないな」と思っていたけど、撮影を続けながら「やっと馴染んできた」「見慣れたし、俺はこれでいける」って思えるようになっていたのがリセットされてしまったので。

また「あれ? これはやっぱりいけないかも」「瀬名に戻れないかも」みたいな感情を抱えながらやっていました(笑)。

撮影/稲澤朝博

――完成作を観て、ストーリーを知っているのに笑ってしまったというようなシーンはありましたか。

笑ってしまったというか、気恥ずかしいかなって思っていたら、意外と普通に観られたのが瀬名とリサがチューをしているところですかね(笑)。自分のキスシーンって大きな画面で見るとちょっと恥ずかしいんですけど、今回は恥ずかしさが全くなかったです。

いろんなものを背負って、気を遣っていてくれた

撮影/稲澤朝博

――今回ご一緒してみて、役者としての岸さんはどうでしたか。

天然とは聞いていましたが、「ここまで天然とは」と思うこともあり(笑)。でも瞬発力がすごくあって、これまでにない経験もさせてもらった気がします。岸優太と門松勝太というキャラクターが近かったから、より一層リンクしたのかなとも思います。

――岸さんの座長らしいエピソードはありますか。

本人自ら「座長らしいことを全くしなかった」と言っていたので、僕もそう言ってあげた方がいいのかもしれないけど、この作品の撮影だけでなくいろんな仕事をやりながらで、本当に大変だったと思いますが、現場では辛い表情一つ見せずにやっていました。

クライマックスのアクションシーンも、僕らは場面ごとに出てくる感じですけど、岸くんはずっと出ているから、夜中まで撮影をしていて。それでも嫌な顔一つせず、明るく、楽しそうにやっていたので、それだけでも周りのみんなの救いになっていたと思います。

「座長らしいことは全くしてない」とは言いながらも、やっぱりいろんなものを背負って、気を遣っていてくれたんじゃないかと思います。岸くんは率先して引っ張っていくような座長というよりは、愛されて、応援したくなるような座長でしたが、僕はみんながツッコめる主役って素敵だなって思いました。

©2023「Gメン」製作委員会 ©小沢としお(秋田書店)2015

――梅田真大役の森本慎太郎さんの印象も教えてください。

見た目からもう全くもって普段の森本くんではないですからね。すごく楽しそうにやっていたと思います。岸くんと森本くんは普段はもっとキラキラしている場所にいると思うんですけど、現場ではすごく人間味を感じました。みんなから愛される人間力がありますね。

あと、G組のグループLINEがあって、今はほぼ解散したかのように動いていないのですが(笑)、それを撮影中はこまめに動かしてくれていました。

――G組の5人の配役は絶妙でしたね。

正直、僕で良かったのかな?という部分はありますけど(苦笑)。もう少し面白キャラじゃない方向で演じたほうが良かったんじゃないかと。インタビューでは「二枚目の役がやっと来た」と言い続けていますけど、僕は僕なりに「僕でいいんですか?」という戸惑いもあったんです。

――でもそんな竜星さんに、瑠東監督はさらに面白さを足すようにお願いしていたんですよね。

「最近、そういう竜星を見てないから」みたいな想いもあったようで。ありがたい限りです。

撮影/稲澤朝博

――雨宮瞳役の吉岡里帆さんとのやり取りもとても面白かったです。

吉岡さんとはちょうど舞台(劇団☆新感線「いのうえ歌舞伎『狐晴明九尾狩』」)でご一緒しているときに、今回の出演オファーがあったので、僕からも「絶対に面白いから出てよ、面白いことをやろうよ」と声をかけました。それが叶っての共演になりました。

――瞳から瀬名が思いっきりビンタをされるシーンもありましたよね。

段取り、テスト、本番と一切力を緩めることなく、彼女は僕にビンタをしてきましたね(笑)。女優魂を感じました。最終的には「俺に恨みでもあるのか?」という気持ちもよぎりましたけど(笑)、僕からも「どんと来い!」って言っていたので、それに応えてくれた気持ちのいいビンタをしてくれました。

現場はいつでも笑いが起きていたんですけど、特に岸くんと吉岡さんと僕との3人のシーンは多かったですね。岸くんと吉岡さんが何かにハマってしまって、笑いが堪えられずに撮影が永遠に終わらないと思うこともありました(笑)。

途中から、僕の顔が面白いとか言い出して。僕はただセリフを言っているだけなのに二人とも笑うんです。けど、それをスタッフさんも笑ってくれて、本当にいつも賑やかないい現場でした。

僕が頑張れる原動力は褒められることかな

撮影/稲澤朝博

――本作ならではの面白さはどこだと思いますか。

まずは一人ひとりのキャラクターが立っていて笑えるところ。この作品は喧嘩のシーンだけでなく高校生ノリも大事にしていて、そこは魅力だと思います。

それからやっぱり門松勝太という主人公を、岸優太が演じていることですね。まるで、原作から出てきたかのように真っ直ぐで、熱くて、空回りもする(笑)。けどマジになるところが、岸優太という人の良さと重なって良かったです。

――観客の皆さんにはどのように楽しんでもらいたいですか。

キャッチコピーが“今を楽しめ”なので、性別に関係なく、今のこの時代に学生生活を送っている人たちには、「仲間っていいな、楽しそうだな」「自分たちもそうなれたなら」という憧れを持って、今を楽しんでもらえたらいいなと思います。

そして、もうこの時代を過ぎてしまった人たちにも、昔を思い返して「あーだこーだ」と言ったりしながら、今を楽しんでもらえたらと思います。それがこういう作品のいいところだと思うので。

©2023「Gメン」製作委員会 ©小沢としお(秋田書店)2015
©2023「Gメン」製作委員会 ©小沢としお(秋田書店)2015

――本作は友情物語でもありますが、竜星さんにとって“友人”とはどんな存在ですか。

僕はわりとめんどくさい性格だと思うんですね(苦笑)。それをわかってくれる上で付き合ってくれる人。あと、僕はずっとしゃべっているタイプなので、聴き手に回ってくれる人ですかね。

付き合いが長くなればわかることもあるとは思いつつ、波長が合う、合わないは最初の段階であるのかなとも思います。僕の場合、ノリとバイブスは大事です(笑)。人数は少ないかもしれないですけど、より深い付き合いをしていると思います。今、友人と呼べる人は、自分が困ったときに動いてくれるような人たちです。

――今回のように友情を描かれるような作品では、プライベートでの経験も活かされるのでしょうか。

今回に限らず、「役は役」として捉える部分もあれば、どこかに自分の要素を入れる場合もあるから、経験が活きる瞬間はあります。それは実際に自分が体験したことでなくてもいいですけど。

例えば、経験したことなら、自分の学生時代は「こんな感じだったな」とか、「こんなふうに仲良くしていたな」とかですし、経験はしていなくても想像や憧れで「こういうふうになりたかったな」とか。

そういう想いがあった上で、じゃあこの作品では「どういうふうにみんなと距離を取ったらいいのかな」「もう少し近寄ってみたほうがいいのかな」と考えることもあるので、経験や想いは活きているのかなと思います。

撮影/稲澤朝博

――勝太は「モテること」を自身の原動力としていますが、竜星さんが今を頑張れる原動力は何ですか。

今に限らず、僕が頑張れる原動力は褒められることかな。やっぱり褒められたいですよね。それは仕事でも、そうじゃないことでも。僕は褒められて伸びるタイプです(笑)。

――最近、人から褒められてうれしかったことはありますか。

褒められれば何でもうれしいです(笑)。りんたろー。さんと一緒に雑誌の撮影をしていたときに、「竜星涼になりたかったわ~」と言われたこととか。「ありがとう! うれしい!」って思いました。

やっぱり自分を否定はしたくないじゃないですか。でも自分で自分を全肯定することは難しくて。何か理由がないと肯定したくてもできない。だから誰かが自分を肯定してくれることは単純にうれしいです。

そうやって褒めてもらえるようなことを増やしたい。それがきっと原動力になっているんだと。いい人の役であろうが、悪い人の役であろうが、「良かったよ」って言ってもらいたい。その一言のためにやっているんだと思います。

――今回、瑠東監督から褒められたことはありますか。

褒められたというか、さっき話したワークショップのときに「めっちゃ感度あがってるわ。レベルアップしてるわ」と、前に会ったときよりも良くなっていると言われて。「マジで任せられる」って言ってもらえたんです。

そのときは恥ずかしくて「そーっすか」みたいな反応をしてしまったんですけど、うれしかったですね。そうやって信頼関係がまた一つ、つながった想いがありました。そういうものがたくさんある人とは、仲良くなれるし、友人になっていけるのだと思います。


冗談を交えながら、インタビューの場を盛り上げてくださった竜星さん。瀬名という二枚目キャラに「僕でいいんですか?」という戸惑いもあったことを打ち明けてくれましたが、竜星さんだからこそ作り上げられたらカッコいいのに面白い瀬名は唯一無二です。

岸優太さんが演じた勝太とのコンビも絶妙で、声をあげて笑ってしまうやり取りもあれば、「仲間っていいな」と思える感動の場面もあります。ぜひ大きなスクリーンでお楽しみください。

作品紹介

映画『Gメン』
2023年8月25日(金)より全国公開

(Medery./ 瀧本 幸恵)

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