王者SVGのNASCAR挑戦で移籍市場が活性化。同郷スタナウェイはフルタイム復帰へ/RSC

 シリーズ3冠を誇る王者“SVG”ことシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(トリプリエイト・レースエンジニアリング/シボレー・カマロZL1)が、NASCARカップシリーズで衝撃的なデビューウインを飾って一躍スターダムを駆け上がったこともあり、オーストラリア最高峰のツーリングカー選手権では来季の北米挑戦が確実視されるチャンピオン離脱に伴って“移籍市場”が活性化。2024年のRSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップに向け、玉突き的にシートが確定している。

 7月に初開催されたシカゴ市街地での初優勝を受け、この8月には“聖地”インディアナポリス(IMS)のロードコースでも自身2戦目を戦ったSVGは、ここでも予選シングルからトップ10に喰い込む地力を見せ、今季のプログラムで共闘したトラックハウス・レーシングチームへの来季移籍が確実視されている。

 豪州では所属先のトリプリエイト・レースエンジニアリングとの間に2024年末までの契約が残っていたが、その“身辺整理”として自身も「チームと一緒に後任候補を探すことが最優先」と気に掛けていた点は、現在RSCでタイトル候補として争うウィル・ブラウン(エレバス・モータースポーツ/シボレー・カマロZL1)の移籍でひと段落。両者ともにチームとは円満な「早期契約解除」で合意を果たした。

 そこから南半球の“ストーブリーグ”は一気に動きを見せ、8月18~20日に開催された2023年RSC第8戦『ザ・ベンド・スーパースプリント』を挟んで、複数のチームが来季ドライバー契約に関する情報をアナウンス。その先陣を切ったのがブラウン離脱を許可したエレバス・モータースポーツで、現在はマット・ストーン・レーシング(MSR)に所属するジャック・ルブロークの獲得を明らかにした。

 そのルブロークは、今季序盤のダーウィンでMSRにチーム初勝利をもたらす大仕事を成し遂げ、現在もランキング8位につけているが、チームとの契約は今シーズンをもって終了となる。2015年のエンデューロ・カップ(耐久カップ登録)でシリーズデビューを果たした31歳は、古巣に戻って今季タイトル候補であるブロディ・コステッキのチームメイトを務めることになった。

「まずはこの旅を一緒に始めて以来、僕を信頼しサポートしてくれたマット・ストーンとMSRチームに感謝したい」と謝辞を述べたルブローク。

「双方にとって難しい決断だったが、2023年が僕にとってMSRでの最後のシーズンになる。ダーウィンでのMSR初勝利を含め、チームにとって(Gen3移行の)この18カ月は大きなものだった。この間に僕らは皆大きく成長した。その一翼を担えたことに、僕自身は永遠に感謝し続けるだろう」

「一方でエレバスも僕のキャリアに貢献し、重要なチャンスを与えてくれたチームだ。来季ふたたび“古巣”に加わることに興奮しているよ。2024年にエレバスの継続的な成功に貢献できることを楽しみにしているが、僕の当面の焦点は、現在のチームで2023年残りのシーズンに全力を尽くすことさ」

そのままカップシリーズへのフル参戦かは不透明ながら、来季のSVGはトラックハウス・レーシングチームへの移籍が確実視されている
今季序盤のダーウィンでマット・ストーン・レーシング(MSR)にチーム初勝利をもたらす大仕事を成し遂げたジャック・ルブローク
古巣に戻って今季タイトル候補であるブロディ・コステッキ(右)のチームメイトを務めることになる

■フォード陣営ペンライトは“エース”レイノルズの離脱を発表

 続いてフォード陣営の一翼を担うペンライト・グローブ・レーシングは、この3年間でエースを務めたデビッド・レイノルズの離脱を発表すると同時に、ドライバーとしては2019年に『引退』を表明していたリッチー・スタナウェイの起用をアナウンスした。

「ペンライト・レーシングは、2024年のドライバーラインアップに関して声明を発表したいと考えています。チームはデビッド・レイノルズとの2024年の契約を更新しない予定です。我々はデイブの将来の努力と成功を祈っています」

 これにより、今季は同郷SVGの耐久カップ登録ペアとして、パートタイムでのレーシングドライバー復帰を果たしていた“Kiwi”のスタナウェイは、来季2024年よりフルタイムでのレースシートを確保することになった。

「来季チームの一員となる素晴らしい機会を与えてくれたペンライト・レーシングに、改めて深く感謝したい」と喜びを語った31歳のスタナウェイ。

「僕はチームが近年目指している方向性に感銘を受けており、これまでのところGen3時代を楽しんでいる。そんな僕らが一緒に何を達成できるか楽しみだ」

 昨季はエレバス・モータースポーツのワイルドカード枠で“祭典”こと『バサースト1000』に復帰参戦し、同じく同郷でシリーズの伝説的ドライバーでもあったグレッグ・マーフィーとのペアで予選トップ10圏内を確保すると、決勝でも11位完走を果たした。

 この実績もあり、次戦よりSVGの耐久カップ登録ペアとしてレッドル・アンポル・レーシングのカマロZL1をドライブするスタナウェイだが、一時はチャンピオン候補と目されていた、才能豊かなドライバーを獲得したチームオーナーのステファン・グローブも、その加入を歓迎する言葉を残した。

「我々がレースチームの構築を続けるなかで、リッチーのような才能のあるドライバーを確保することは非常にエキサイティングなニュースだ。それこそが、チームにレースでの勝利とチャンピオンシップに挑戦する機会を与えてくれるんだからね」と期待を寄せるグローブ代表。

「リッチーの経験とフィードバックは、チームが今後さらに発展していくうえで素晴らしいものとなるだろう。そして最後にデイブの前進を祈り、過去3シーズンにわたるチームへの貢献に感謝したい」

 そして、先週末の第8戦で今季自己最高の4位を獲得したニック・パーカット(ウォーキンショー・アンドレッティ・ユナイテッド/フォード・マスタング)は、僚友チャズ・モスタートがタイトル獲得の権利を有する状況ながら、自身はランキングトップ20圏外という前半戦の不振を最大の理由に、今季限りでWAUを離れることが決まった。

「WAUファミリーと僕の時間は終わりを迎えた。僕らが望み、期待していた結果が得られればよかったのにと思うよ。チャズと一緒に仕事をした時間がとても楽しかったし、これからも生涯の友人と言えるのは素晴らしいことだ。チームのみんなが、2号車のスピードを引き出すために何時間も費やしたたゆまぬ努力に感謝したい。ファンも含めて、絶え間ないサポートは最高だった」

フォード陣営の一翼を担うペンライト・グローブ・レーシングは、この3年間でエースを務めたデビッド・レイノルズの離脱を発表
古豪ギャリー・ロジャー・モータースポーツ時代以来のフルタイム復帰となるリッチー・スタナウェイ
ニック・パーカット(ウォーキンショー・アンドレッティ・ユナイテッド/フォード・マスタング)も今季限りでのチーム離脱が決まった

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