【大分】大分市東浜の井上俊男さん(87)は約50年前から、ボランティアで子どもや高齢者らに切り絵を教えている。県内の幼稚園や老人クラブ、公民館などで開講した教室は通算900回を超えた。動植物や人気アニメのキャラクターなどを瞬時に作り、子どもたちに贈っている。
事務機器の営業をしていた30代前半の時に、息子が破った自宅の障子を補修するため、チョウやトンボの形に切った紙を貼った。近所で評判になり、「どこで売っているの」と聞かれた。営業先でも切り絵を披露すると、「講習会を開いてほしい」と頼まれるようになったという。
国東市安岐町の幼稚園を皮切りに教室を開講。65歳で役員だった会社を退職し、現在は年間40~50回の教室を開く。県内だけでなく、熊本県に出向いたこともある。教室がない日は大分市高城西町のショッピングセンターで切り絵仲間と制作している。
レパートリーは犬やライオン、金魚、チューリップなど約40種類。子どもたちの一番人気は「アンパンマン」という。約40年使うはさみは、柄の部分が経年劣化で4カ所も折れ、テープを巻いて補修。自然と曲がり、手になじむように変形している。
教室では、切り取り線を書いた二つ折りの色紙を配り、受講生が線に沿って切る。年齢に関係なく、夢中になっている。「うまくできているかどうか、紙を開く楽しみがある。皆さんが喜んでくれることが何よりうれしい」と柔和な笑顔を見せた。