「遼さんのお父さんから基礎を教わりました」U-25世代スイングセルフ解説/鈴木晃祐

金谷拓実、中島啓太、蝉川泰果、平田憲聖…と今年の男子ツアーは毎週のように若手の誰かが入れ替わりで活躍している。お互いが刺激し合う相乗効果で、まさに“強い世代”を形成しつつあるのは間違いない。彼らはどんな経歴でゴルフをしてきたのか、そしてどんなスイングをしているのか。「U-25世代」の若者たちにスポットをあて、彼ら自身の口でスイングをセルフ解説してもらった。

たった8試合でシード“ほぼ確”の実力派

第一回で取り上げる選手はツアールーキーでもある23歳の鈴木晃祐だ。東北福祉大ゴルフ部出身で蝉川泰果の同期。蝉川がキャプテン、鈴木が副キャプテンという間柄だった。他の同世代の若手選手と同じように鈴木も大学時代からツアーで活躍し、昨年5月の「アジアパシフィックダイヤモンドカップ」では、最終日に「63」を出して首位と1打差の2位となった経験もある。今季はQT30位の資格で試合に出場し、8試合で稼いだ賞金が約1800万円(賞金ランク14位)と少ない試合数の中でもシードをほぼ確定させている(下部ツアーでは2勝して賞金ランク2位)。今、優勝に最も近い若手といえるだろう。

では早速、彼のスイングをみてみよう。

ボール位置は左足かかと線上より内側に入っている(撮影/服部謙二郎)

―スイング中、意識しているポイントはどのあたりですか?

今はすごくタイミングを意識しています。曲がるような時はたいていリズムが速くなりやすい。体が回らなくなって、トップが浅くなることが多いですね。その結果、切り返しも早くなって打ち急いでしまい、だいたい引っかけのミスが多いです。

―自分の中でリズムの音みたいのがあるんですか?ワン、ツー、スリーみたいな?

特にはないですけど…、トン、トン、トン、みたいな感じで振っています。アドレスでトン、トップでトン、インパクトでトンみたいな。リズムの音はほんと「イチ、ニッ、サン」でもいいし、「チャー、シュー、メン」でも何でも良くて、自分のリズムを持って振れた方が絶対にいいと思います。僕は試合が始まったら、リズムのことしか考えていません。細かいスイングのことは、試合が終わった後の練習場で考えます。

フィニッシュまでリズムよく!(撮影/中野義昌)

―スイングを見ていると、けっこう内側にテンションがかかって(腹筋や体幹に力が入って両脇で物を抱えるように)体を内向きにしぼって使っているように見えますが…。

そうですね。あまり体をオープンに使うイメージはないですね。ゴルフを覚えた時に「体全体で打つように」と教わって、それを小さい頃からずっと心がけているので、今は無意識に内向きにしぼるような感じになっているのだと思います。体の前で何か太いポールを抱えて、体全体で球を打っているイメージです。そうやって体で打てているとボールの手前の低い位置からヘッドを入れられるので、結果的にヘッドの入りは安定してきます。

―ジュニア時代に教わったことが今、生きているということですね。

ハイ!体を使ったアプローチをしなさいとずっと言われていて、その延長にショットがあると教えてもらいました。手から下ろすイメージは捨て、体の回転を意識して手が体の近いところを通るように振っています。

手が体の近くを通る。インパクトで右足はベタ足だ(撮影/服部謙二郎)

―アプローチからショットを作ったということですか?

そうですね。グリーン周りの30yd以内の練習が多くて、結果、それがショットにも生きていると思います。30ydのアプローチで体を使う感覚のまま、ドライバーも同じように打っています。

―内向きなスイングのメリットはどんなところですか?

あまり振り幅が大きくなくてコンパクトに打てるところですかね。安定感があって、再現性が高いと思います。体重移動の意識はほとんどなくて、その場で回転しているイメージです。飛ばしたい時は振っていきますけど、それでも体全体で打ってフェース面は変えないように心がけます。

―どちらかというと安定感重視で、飛距離重視ではないように聞こえますが、それでも鈴木プロは飛びますよね?

そんなことないですけどね、周りが飛びますから…。今はキャリーの平均が290ydぐらいですかね。もともと飛ばなかったんですけど、トレーニングをやってまあまあ飛距離が伸びたんですよ。それこそ15ydぐらい伸びた。一気に伸びたというよりは、だんだんと体を作っていって、試合をやりながら伸びていった感じですね。

体重移動の意識は少ない。その場で回転するイメージだ(撮影/服部謙二郎)

―どんなトレーニングをやったんですか?

特に股関節回りですが、鍛えるというより可動域を広げたり、腸腰筋とか股関節周りの筋肉に刺激を与えて動かすイメージですね。スクワットをやるにしても、重さでがっつりというよりは、軽いやつを何回もやって動ける体を作るようなトレーニングが多かったですね。

―持ち球はフェードが多いように見えましたが…

フェード…ですかね(笑)。その日の体の調子によって変わります。ストレートだったり、フェードだったり…。でも最近はフェードが多いかな。朝の練習場次第で、試合ではイメージいい方の弾道を選んでいます。

―ボール位置は、少し中寄りですか?

そうですね。小学生の時にいろんな場所に置いて打ってみて、一番合ったのが真ん中でした。内側に入っていた方が真っすぐ行きやすかったんです。でもボール位置は人それぞれなんで、自分に合った位置を見つけるのが先決だと思います。

ボール位置は左足かかと線上より内側に入っている(撮影/服部謙二郎)

―スイングコーチはつけていますか?

今はいないですね。大学4年でナショナルチームに入っていた時はガレス・ジョーンズさん(ナショナルチームのヘッドコーチ)に見てもらっていましたけど、今は自分で考えてやっています。

―元々ジュニアのころは誰にスイングを教えてもらっていたんですか?

家の近くに「SELA」という練習場があって、そこで(石川)遼さんのお父さんの勝美さんや佐々木孝則プロから教わっていました。お二人にゴルフの基礎をイチから教わりました。勝美さんは今でも自分の父と連絡を取り合っていて、僕がいい結果出した時などには父経由でメッセージをもらっています。

優勝争いする場面も増えた(撮影/和田慎太郎)

その石川遼が育った千葉県野田市にあるゴルフ練習場の「ゴルフサロンSELA」には、奥のネットにSELAという文字があり、石川はその文字に当てていたというエピソードは有名な話。鈴木にもその話を振ってみると、「飛ばなかったから手前でヒューンと落ちていました(笑)。高校3年生の時にギリギリ当たるようになったかな…ぐらいです。300yd飛ばないと当たらないですからね」と当時を懐かしむ。今ならきっと、そのネットに軽々と当ててくるのだろう。(取材・構成/服部謙二郎)

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