郷土の星、会場揺らす 朝乃山「歓声力に恩返し」

多くの地元ファンに囲まれて記念写真に納まる朝乃山=黒部市総合体育センター

  ●三役復帰へ決意新た

 郷土の星が富山県民に笑顔を呼び起こした。大相撲黒部場所が行われた25日、朝乃山(富山市出身)が姿を見せるたびに歓喜の声が沸き起こり、会場を揺らした。「歓声を力に変えて、元にいた番付を目指してやっていくのが恩返し」。朝乃山は応援される喜びをかみしめ、三役復帰へ決意を新たにした。

 取組の土俵に朝乃山が立つと、大きな拍手と歓声が広がり、客席全体を覆う勢いで「朝乃山」のタオルが掲げられた。

 朝乃山は小結阿炎に2度、土俵際に押されながらも、最後は上手投げで土を付けた。会場は大関の貴景勝や霧島ら三役陣の取組をしのぐ、この日一番の盛り上がりとなった。

 「久しぶりの大歓声を浴びてうれしかった。頑張ろうという気持ちになった」と朝乃山。名古屋場所で痛めた左上腕にサポーターを施し、「少しずつ相撲を取れるようになってきた」と朝稽古では関脇若元春らと5番を取った。

 郷土の期待を一身に受け止め、秋場所(9月10日初日・両国国技館)に向け「今年目標にしていた三役、二桁以上(の白星)を目指して頑張りたい」と意気込んだ。

 写真撮影会には人垣ができ、サイン攻めの大歓迎を受けて、ファンとの交流も深めた。

  ●「綱とりを」観客エール 取組、交流に感激

 「富山県出身、朝乃山」のアナウンスが流れるたび、会場は熱気に包まれ、観客から「綱とりを目指して」とエールが飛んだ。

 かわいらしい絵とともに「朝」「乃」「山」と1文字ずつ描いた手製うちわ三つで友達と声援を送った富大附属小4年の坂本珠子さん(富山市)は「とても気合の入った取組で、格好良かった」と興奮気味に話した。花道で気軽にサインに応じてくれたといい、「優しくて人柄も素晴らしい。最高に幸せです」と目を輝かせた。

 豆力士も刺激を受けた。両国国技館で行われた今年のわんぱく相撲全国大会に出場した黒部市生地小6年の園家弘祐紀君は「朝乃山の取組は豪快で、迫力たっぷり。やっぱり強い」と目を丸くし、近づいた全国小学生相撲北信越大会での健闘を誓った。

 生後3カ月の男の赤ちゃんを連れて一緒に写真を撮った黒部市内の20代主婦は「健やかな成長を願って抱っこし、頭も『いい子、いい子』となでてくれ、優しさが伝わってきた。第二の朝乃山になるかもしれません」と笑顔を見せた。

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