夕陽ハンターVOL.20~和歌に詠われた『万葉の岬』で鑑賞する“万葉の夕劇”/金ヶ崎(兵庫県相生市)

キャンピングカー『ソーラーキング号』で日本全国を自由気ままに旅しながら、通算2,000ヵ所以上の観光地を撮影してきた松岡ヒロノブ。とくにお気に入りのシチュエーションは、様々な絶景スポットで出会う感動的な『夕陽』です。 瀬戸内海には美しい夕陽スポットが数多くあるといわれます。

本シリーズは、フォトライター松岡が瀬戸内地域の夕陽名所を発掘し、その時々の季節や気象条件のなかで最適なタイミングを狙って感動的な夕景をものにしていくコーナーです。

人は生涯にいったい何回くらい夕陽を見られるのでしょうか? そう考えると松岡はいても立ってもいられず、『夕陽ハンター』に変身してしまうのです……

万葉集にも詠われた絶景の地『万葉の岬』

『万葉の岬』は兵庫県南西部に位置する瀬戸内海に突き出した岬で、正式名称は『金ヶ崎(かねがさき)』ですが、奈良時代の万葉歌人・山部赤人(やまべのあかひと)が和歌を詠んだ地として知られることから『万葉の岬』とも呼ばれます。

万葉の岬は標高約130mの丘陵地で、夕陽が沈む西側の眺めはまさに“万葉の絶景”!眼下に広がる相生湾内に蔓島(かずらしま)と牡蠣(カキ)の養殖筏が浮かび、右側には釜崎や赤穂御崎の入り組んだ陸地、左奥のはるか彼方には巨大な小豆島も横たわります。

岬の南側には家島諸島の島々も一望できるほか、なだらかな斜面に『つばき園』があり、12~4月にかけて約40種、230本あまりの椿の花が咲き誇ります。

つばき園には山部赤人が詠った和歌を含む3つの歌碑も設置されています。

また、よく晴れた日には、東側に明石海峡大橋や淡路島も見えるのだとか。

このように『万葉の岬』は瀬戸内海を約180度見渡せる絶景スポットで、ベンチに腰をおろして万葉の時代を偲びつつ、島々を眺めながらゆったりと心落ち着くひと時を過ごせる場所なのです!

金ヶ崎を散策しながら夕陽ポイント探し!

つばき園から海岸へ降りる全長約650mの遊歩道もあり、岬の先端部まで歩いていけます。頂上の展望地も良かったですが、さらに良い夕陽ポイントを求めて、岬を探索することにしました。

頂上からも見えていた蔓(かずら)島を見ながら階段状の道を下っていきます。

しばらく進んでいくと、蔓島の左側に『君島』が見えてきました。瀬戸内海を行きかう船舶を眺めつつ、絶景の遊歩道をさらに下っていきます。

遊歩道の右側(西側)が開けたポイントを発見!ここなら南側の家島諸島も見えますし、夕陽ハンティングの候補地の一つとして認定!(笑)

さらに下っていくと道がつづら折りになり、西へ向かって伸びている場所も。だいぶ高度は下がりましたが、海が近くてここもなかなか良い夕陽ポイント…

最後はやや急坂を下って、ついに金ヶ崎の海岸部に到着!

金ヶ崎で“万葉の絶景”を満喫!

海側を見れば、紺碧の海に君島と蔓島が浮かび、その背後に家島諸島や小豆島も望める絶景が広がっています!

少し左に進むとすぐに行き止まりとなりますが、ここが金ヶ崎の南端です!東側には室津や姫路の播磨臨海工業地帯が見え、『地ノ唐荷島』などの小さな島々が沖に浮かんでいます。

この『唐荷島』は3つの小島からなり、山部赤人が詠んだ以下の短歌

『玉藻刈る 辛荷の島に 島廻りする 鵜にしもあれや 家思はざらむ』(※万葉集に収録)

の『辛荷の島』は、現在の『唐荷島』のことだそうです。

「遠く旅に出ていても家人(妻)のことを思ってしまう」という内容の和歌ですが、千数百年前の万葉歌人とほぼ同じ景色を見られて、感動もひとしお!

金ヶ崎の西側には、海岸に沿って遊歩道が整備されています。

海辺には荒波に削られてできた特徴的な奇岩群も見られ、それらをモチーフにした夕陽も魅力的です。

う~む、どこで夕陽ハンティングするか、候補が多すぎて迷ってしまいます……

相生湾の奥には発電所や工場群が建ち並び、海上には大型船舶も行き交います。遊歩道は岬の付け根まで続いていますが、途中に上へ登れる階段があり、いったん頂上まで戻ることにしました。

ホテル万葉岬でランチやカフェタイムも!

迷った末に、今回の夕陽ハンティングは丘陵の頂上にある展望地に決定!ここは南側の家島諸島が見えにくいものの、夕陽はできるだけ高い視点から望むのがいいんですよね。

夕陽ポイントの背後には『HOTEL万葉岬』もあり、宿泊はもちろん、ランチ・ディナー・ティーラウンジのみの利用も可能。夕刻まで、眺めの良いティーラウンジでカフェタイムを満喫するのもいいでしょう!

『万葉の岬』で鑑賞する“万葉の夕劇”!

季節は晩秋の11月下旬、時刻は16時半ごろ。夕陽で相生湾が黄金色に輝きだしました!いよいよ、夕陽劇場の開演です!

上空には雲が薄く広がっていて、しかも水平線近くでは雲が途切れて太陽光が上向きに放射されやすい状態。これは劇的な夕焼けが見られる大チャンスで、ドキドキしながら日没を待ちます!

ちょうど『日本の夕陽百選』として知られる赤穂御崎の近くに太陽が沈んでいきます。

そして日没後しばらくすると、期待通り上空の雲が黄色く染まってきました!

さらに数分たつと色彩が黄色からオレンジ色へ変化、上空の雲全体が輝きだしました!養殖筏が浮かぶ相生湾内には、大小の船舶がひっきりなしに行きかいます。

そしてオレンジ色から真紅へ、極上の“夕劇”がいよいよクライマックスを迎えます!海面も茜(あかね)色に染まり、滅多に見られないドラマチックな夕焼けが広がります!!

その後、上空の雲はあっという間に消えていきましたが、日没後の照り返しによって、今度は空自体が明るく輝きだします!まるでアンコールに応えてくれているような、見事な夕照(せきしょう)!

やがて夕闇が迫り、最後に水平線に紅いラインが走ります。ゆっくりと劇場の幕が下りていくような感覚。何ともいえない、まったりとした心地よい時間が流れていきます。

「いや~、これだから夕陽ハンターはやめられんわ!」

まさに絵に描いたような夕陽ハンティングの成功劇。瀬戸内Finderの『夕陽ハンター』シリーズとしても過去最高レベルの素晴らしい夕景をモノにできました!勝利の余韻に浸りながら、しばらくその場で夕暮れを眺めていました・・・

~ 夕陽ハンターのサンセット豆知識 ~
夕景の真髄は日没後に始まる!
雲が上空全体に薄く広がる時は、最高の夕焼けが見られる大チャンス!
そして、メインのドラマは日没後に始まるのです。
日没直後にすぐ帰ってしまうようでは、夕陽ハンター失格ですよ!(笑)

万葉の岬と金ヶ崎
住所/兵庫県相生市相生5321
電話/0791-22-7177(相生市観光協会)
駐車場/あり(無料)
最寄駅/JR「相生駅」からバスで約20分(ウエスト神姫バス「万葉の岬」停留所車下車)
https://www.nishiharima.jp/spot/256

瀬戸内Finderフォトライター 松岡広宣

▼記事提供元

[(https://setouchifinder.com/ja/)
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