長崎の中華料亭 オーベルジュに新装 築100年以上の風情残す 2020年閉店「陶々亭」

畳の座敷を改装したダイニング=長崎市、オーベルジュ「陶々亭」

 3年前に閉店した長崎県長崎市十人町の中華料亭「陶々亭」が9月1日、レストランと宿泊施設を兼ねたオーベルジュ「陶々亭」としてリニューアルオープンする。築100年を超える古民家の風情を極力残しつつ、装いを新たにした。酒井麻里衣支配人(38)は「料理と歴史ある建築物のどちらも味わってほしい」としている。
 1908(明治41)年、貿易商だった青田家の住宅として唐人屋敷近くに建てられた。木造瓦ぶき2階建ての主屋と離れ、れんが造りの蔵で構成し計約320平方メートル。黒しっくい塗りの外壁や鉄製の防火扉が歴史ある建造物として評価され、2011年の市都市景観賞奨励賞に選ばれた。
 1949(昭和24)年からは、豚の角煮やハトシなど卓袱(しっぽく)中華を楽しめる料亭として営業。畳敷きの和室で中華を食べるスタイルは珍しく、多くの人に親しまれたが、2020年、約70年続いたのれんを下ろした。
 オーナーは、長崎や佐賀でマツダ車を販売するマツダモビリティ佐賀(佐賀市)の円田幹(つよし)社長。料亭になる前から祖父が所有権を持ち、自身も幼いころから料理長と親交があった。「この古き良き建物をこれからも残していきたい」と権利を引き継ぎ、飲食業への新規参入に踏み切った。
 主屋1階を「レストランHAJIME」とし、イタリアンを提供する。厨房(ちゅうぼう)には石窯も備えた。ダイニングの床は全て畳からフローリングに変更し、個室には掘りごたつ式の円卓を残した。

黒しっくい塗りの外壁など風情を残す陶々亭

 客室は主屋2階と離れ、蔵の3タイプ。最も広い主屋は床の間や畳敷き、洋風ベッドがある「和モダン」がコンセプト。離れは天井を一部外して吹き抜けにし、1階をリビング、2階を寝室にした。家財置き場だった蔵を改装した客室は、れんがの内壁をあえて露出し、「隠れ家」のような雰囲気を感じられる。
 梁(はり)や桁などは建築当時のまま。一方で欧州の現代デザインの調度品を採り入れた。酒井支配人は「100年以上愛されてきた建物を守りつつ、新たな風を吹き込み、幅広い年代の方々に愛されるオーベルジュにしていきたい」と話した。
 現在は素泊まりのみ予約受け付け中。1人1泊1万6千円から。レストランは準備ができ次第オープンする。


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