志功の放熱「見習いたい」ヤマザキマリさん、原田マハさん 青森県美でトークショー

トークショー終了後、棟方志功のポーズをまねて記念撮影する(左から)原田さん、石井さん、ヤマザキさん=25日午後、青森市の県立美術館

 青森市出身の世界的板画家・棟方志功を敬愛する漫画家のヤマザキマリさん(56)、小説家の原田マハさん(61)が25日、青森市の県立美術館1階スタジオで初のトークショーを行った。幼少期から50年来のファンという2人は、あふれ出るエネルギーで独自の作品を生み出し続けた棟方の姿勢を「同じクリエイターとして見習いたい」と評価。既存の価値観にとらわれない独自の道を歩んだ人生にも触れ、「初めて世界に認知された現代アーティスト」とたたえた。

 トークショーは、県立美術館で開かれている生誕120年記念展「メイキング・オブ・ムナカタ」(同展実行委主催)の関連イベントとして開催。棟方志功研究家で孫の石井頼子さん(66)をコーディネーターに、棟方への愛を約2時間にわたり語り尽くした。

 ヤマザキさんは棟方作品を「音か楽譜」と表現。自身の代表作「テルマエ・ロマエ」など、漫画を描く際は必ず音楽を流しているといい「棟方さんの柵(作品)からは打楽器のような彫りのリズムと交響楽が聞こえてくる」と語った。

 美術の知識も豊富な原田さんは、棟方作品の魅力を「全てにおいてモチベーションが高い。モチベーションの高さは創作の一番の原点」と説明。ヤマザキさんの風呂好きが高じて生まれた「テルマエ・ロマエ」も同様-と指摘すると、ヤマザキさんも「人からの評価は後付け。自分は蒸気機関車で、石炭をくべながら黒煙を出してどんどん前に進んでいったら、なぜかそこから排出されたものが評価されていた」と応じた。

 ヤマザキさんは仕事が行き詰まった時には棟方の無邪気な姿を捉えた写真を眺めるといい、「他人の目を意識せず、自分の人生を謳歌(おうか)した人」とうらやんだ。

 また、原田さんは「メイキング・オブ・ムナカタ」で展示中の「善知鳥版画巻(うとうはんがかん)」のうちの一枚「夜訪(よどい)」を挙げ、「驚き、困惑、恐怖が入り交じった表情が生々しい。日本美術史に残る傑作中の傑作」と絶賛。「自分の心だけを信じた棟方の心情がよく表れている」と語った。

© 株式会社東奥日報社