社説:非道続く1年半 国際社会の結束で停戦探れ

 いまの瞬間も多くの命が無残に奪われ、踏みにじられ続けている。

 非道な侵略をロシアは即刻やめ、撤退すべきだ。国際社会の声をいっそう集め、突き付けねばならない。

 ウクライナに対するロシアの侵攻が始まって1年半が過ぎた。

 開戦後にロシア軍に制圧された地域の約半分をウクライナ軍は奪還した。ただ、米欧の主力戦車などの供与を受けて今年6月に反転攻勢に出たが、ロシアが築いた塹壕(ざんごう)や地雷原のため、前進の遅れをゼレンスキー大統領も認めている。

 膠着(こうちゃく)した戦況の打開をかけた激しい攻防から、死傷者が急増している。あまりに理不尽で、大きすぎる侵略戦争の犠牲と言わざるを得ない。

 両軍の死者はロシアが約12万人、ウクライナが約7万人との米当局の推計を米有力紙が報じている。負傷者を含めると計50万人に迫るという。

 ウクライナは反攻へのさらなる支援を米欧側に求め、米国製F16戦闘機の投入計画を進めるが、来年以降となる見通しだ。戦闘はさらに長期化するとの見方が強い。

 両軍は、局面突破に向けて殺傷力の強いクラスター(集束)弾を使用している。長期的に残る不発弾の被害が懸念される。さらにロシアは西側諸国と接するベラルーシへの戦術核兵器の配備を始め、核使用の脅しを強めているのは許しがたい。

 一方で、ロシア国内の矛盾が覆いきれなくなっている。

 6月の民間軍事会社「ワグネル」の武装反乱は象徴的だろう。「米欧が仕掛けた戦争への防衛」としてきたプーチン大統領の主張を真っ向から否定し、「大義なき侵略」であることを暴きだした。

 プーチン氏は、徴兵拡大とともに戦争継続に都合の良い情報統制を強めている。だが、モスクワにも無人機攻撃が相次ぐ上、ワグネル創設者プリゴジン氏の搭乗機墜落死への関与も疑われる政権に、国民の不信と不安は高まらざるをえまい。

 ウクライナ侵攻での民間人の死者は、国連統計の9400人超をはるかに上回るとみられている。ロシアによる虐殺や収奪、子どもの連れ去りなどの戦争犯罪は、国際的な裁きを受けさせねばならない。

 ウクライナからの国外退避は627万人に上り、日本への避難民は約2500人いる。平穏に暮らせるよう、息の長い支援が求められる。

 ロシアは穀物やエネルギーの国際供給網を揺さぶり、中国や北朝鮮に接近して世界での孤立の回避に躍起となっている。

 いかなる理由でも、他国の領土、国民を侵すことは許さない-と国際社会が結束して圧力と対話を重ね、侵略阻止と停戦・和平の道を探らねばならない。

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