公衆トイレを使いやすく 竹中さん(74)、声上げ35年以上 観光都市・長崎で活動続く

「それぞれの理由で『優先して使ってもいいかな』と思ってほしかった」。優先トイレに込めた思いを語る竹中さん=長崎市役所

 「トイレはおもてなしの基本」が信条。観光都市の長崎市内で公衆トイレの使いやすさやマナーの向上に向け、35年以上活動してきた。日本トイレ協会(東京)の運営委員も務め、設計段階から利用者の声を反映。「お金をかけなくても、ちょっとした気遣いで良いものになる」と話す。
 はまるきっかけは、自身が企画する街歩きイベント「長崎ウーマンズ・ウォークラリー」。途中で立ち寄る公衆トイレの汚さを指摘され、実態を調べた。活動を組織化し行政や企業も巻き込もうと、2010年には市民団体「みんなにやさしいトイレ会議実行委」を立ち上げた。
 同会議は使いやすさの基準を設定。▽洗面台にバッグかけ▽男子トイレにもベビーキープ(乳幼児用椅子)▽緊急ブザーは上下2段-など年齢や性別に関係なく、工夫を盛り込んだ。
 最近、新たに提案しているのが「男性用トイレにも汚物入れを」。おむつを着用し、出先で処理に困る高齢者が多いという。「排せつが不自由だと外出する気もなくなり、次第に引きこもるようになってしまう」。こうした高齢社会に合わせた工夫に加え、LGBTへの配慮など時代の変化に対応し、進化させることも必要と指摘する。
 活動の「集大成」と評するのが、今年開庁した長崎市役所新庁舎のトイレ。設計段階から市と協議し、こだわりを詰め込んだ。男女用とは別に、車いすや妊娠中、子連れの人などが利用するトイレには「優先トイレ」と名付けた。「LGBTの人も使いやすいよう男女を示すマークはあえて入れていない。それぞれの理由で『優先して使ってもいいかな』と思ってほしかった」と意図を話す。
 これまで両膝を数回手術した。車いすや松葉づえで生活している時も各地のトイレを回り、体が不自由な人の視点で見つめた。
 そこまでトイレにかける情熱はどこから-。「誰かが声を上げないと(市に)伝わらない。公衆トイレの文句を直接言う人って、あまりいないから。観光地に欠かせないトイレがきれいで使いやすいと、印象も良くなる。長崎が好きだからこそ、訪れた人にも好きになってほしい」

日本トイレ協会のグッドトイレ選奨を受賞した天主公園の公衆トイレ=長崎市平和町

 浦上天主堂近くの天主公園など、これまで市と協力し携わったトイレは10カ所以上。先月は設備の専門家を招き、市内各所の臭いなど現状を調査。「掃除やメンテナンスのしやすさ」という点の重要性に気付かされた。「トイレって本当に奥深い。『これで終わり』ということはない」。誰もが使いやすい理想型を追い求め、今日も出先でチェックする。


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