ランキング上位4名が軒並み無得点。大荒れの一戦でノバラックが初優勝/FIA F2第12戦レース2

 8月27日、2023年FIA F2第12戦のフィーチャーレース(決勝レース2)が、オランダのザントフォールト・サーキットで開催され、クレモン・ノバラック(トライデント)がFIA F2初優勝を飾った。ランキング上位勢の多くがリタイアに終わる荒れ模様の中、岩佐歩夢(ダムス/レッドブル&ホンダ育成)は13位でチェッカーを受けた。

 第12戦決勝レース2のグリッドは25日に行われた予選結果順となり、ジャック・クロフォード(ハイテック・パルスエイト/レッドブル育成)が初ポールポジションを獲得。2番グリッドにデニス・ハウガー(MPモータースポーツ/レッドブル育成)と、レッドブル育成の2台が最前列を占めた。

 2列目3番グリッドにランキング2位のフレデリック・ベスティ(プレマ・レーシング/メルセデス育成)、4番グリッドにゼイン・マロニー(ロダン・カーリン/レッドブル育成)が続いた。

 3列目5番グリッドにランキング4位のジャック・ドゥーハン(インビクタ・ビルトゥジ・レーシング/アルピーヌ育成)、6番グリッドにオリバー・ベアマン(プレマ・レーシング/フェラーリ育成)と、いずれもF1ジュニアプログラムに所属するドライバーが上位グリッドを占めた。

 今回のドライタイヤのコンパウンドは前戦から変わらず、プライムタイヤがミディアム(イエロー)、オプションタイヤがソフト(レッド)となる。

 直前の計測で気温16度、路面温度17.4度、直前まで小雨が降るもスタート時点では雨あがりの曇天に。ただ、フォーメーションラップはセーフティカー(SC)先導、なおタイヤ交換義務を有する周回数40周(60分+1周)の決勝レース2はローリングスタートで開始された。

 しかし、オープニングラップのターン1で2番手ベスティが単独スピン。さらに7番手スタートのファン・マヌエル・コレア(ファン・アメルスフォールト・レーシング)が6番手ベアマンに追突。そのあおりを受けてビクトール・マルタンス(ARTグランプリ)もターン1でコースオフし、順位を落とす。

 さらに5番手スタートのドゥーハンはスタート直前の最終ターンで単独スピンを喫し、グリーンフラッグを受ける前にクラッシュ。スタートタイヤに柔らかめのオプションタイヤ(ソフト/レッド)を選択した車両はコールドタイヤに苦戦する結果に。そんななか、12番手スタートの岩佐は8番手までポジションを上げた。

 レースは4周目に再開。岩佐はリスタートのターン1で先行するクッシュ・マイニ(カンポス・レーシング)に勝負を仕掛けた。しかし、ターン1イン側の路面は濡れており、岩佐は一時コントロールを失いコースオフ。これで順位を14番手まで大きく下げることに。

 また、バランスを崩した岩佐のリヤタイヤとマイニのフロントウイングが接触。マイニはフロントウイングを損傷し、ピットストップを余儀なくされる。これで岩佐に対し、10秒のタイムペナルティが課せられることとなった。

 8周目、4番手につけていたマロニーがピットイン。それを見たトップのクロフォード、2番手ハウガー、3番手コレアが9周目にタイヤを交換。上位勢はオプションタイヤスタートだったこともあり、ここでプライムタイヤ(ミディアム/イエロー)に交換する。

 低気温、低路温ということでプライムタイヤが最後まで持つと予想する各車は早めのピットインを敢行する。そんななか、10周目にアウトラップだったランキング首位のテオ・プルシェール(ARTグランプリ)がターン7でバランスを崩しクラッシュ。

 これでSC導入と読んだステイ組がピットイン。プレマ勢はベアマン、ベスティの順でダブルピットを敢行。しかし、ピットアウト後のアウトラップでベスティのリヤタイヤが左右ともに外れるまさかのアクシデントが発生。ベスティは無線でチームに対する怒りをあらわにする。

 短時間の間にランキング上位2台がレースを終えるという状況の中、SCは長時間に及んだ。

 SC中の順位は、トップがクレモン・ノバラック(トライデント)、2番手クロフォード、3番手マロニー、4番手リチャード・フェルシュフォー(ファン・アメルスフォールト・レーシング)、5番手マルタンス、6番手ベアマン、7番手ハウガー、8番手ハジャル、9番手ユアン・ダルバラ(MPモータースポーツ)、10番手エンツォ・フィッティパルディ(ロダン・カーリン/レッドブル育成)となった。

 ノバラックらステイ組がSC導入の好機も活かし大幅なポジションアップに成功する形となり、一方の岩佐は15番手となった。

 レースは16周目に再開。リスタートのターン1でマロニーがクロフォードをかわし2番手に浮上。一方、同じ周のターン3ではマルタンスがベアマンのインにやや強引に飛び込み、2台は接触。弾き出される形となったベアマンはターン3アウト側のウォールにヒットし、ここでプレマ勢が2台ともにリタイアという結果に。なお、これでマルタンスに10秒のタイムペナルティが課せられることに。

 岩佐とランキングを争う3名が軒並みリタイアに終わるなか、19周目にはトップのノバラックの背後にマロニーが接近。しかし、育成プログラムには所属しない、今季これまで入賞は1度(7位/2点)というノバラックもファステストを更新する走りを見せ、レッドブル育成のマロニーを抑える。

 ただ、この時点で予定周回数は残り半分ということもあり、マロニーは攻めどきを伺う。そんななか26周目に、本レースが時間レースとなり、レース時間が残り15分とわかると、ノバラックはさらにペースを上げ、30周時点で2台のギャップは2.6秒まで広がった。

 ただ、31周目にノバラックとマロニーのギャップは1.8秒まで縮まる。ノバラックのフロントタイヤにはグレイニングもで始める状況となるが、マロニーの背後には3番手クロフォードが1秒以内に接近し、レースは残り5分を切った。

 残り3分時点でマロニーはクロフォードを抑えることに必死となり、ノバラックはギャップを2秒以上に広げる。ただ、クロフォードもタイヤの限界が近く、なかなかマロニーを攻略できないままファイナルラップを迎えた。

2023年FIA F2第12戦ザントフォールト 岩佐歩夢(ダムス/レッドブル&ホンダ育成)

 38周目、FIA F2では長く苦戦が続いたノバラックが悲願のトップチェッカーを受け、スポットも含めるとFIA F2通算3年目にして初優勝。トライデントチームにとってはFIA F2通算2勝目、フィーチャーレースに関してはチーム史上初勝利を飾った。なお、ノバラックはファステストラップもマークしている。

 2位にポジションを守り切ったマロニー、3位にクロフォードとレッドブル育成2名が表彰台に登壇。岩佐は好ペースを刻み最終的に13位となった。なお、前戦終了時点でランキング5位につけるマルタンスは10秒ペナルティを受けるも9位となり、2ポイントを獲得している。

 2023年のFIA F2、次戦となる第13戦は9月1日〜3日にイタリアのモンツァ・サーキットで開催される。今季も残すは2戦、ザントフォールトではランキング上位4名が揃って無得点となったが、次戦も予測不可能な激しい戦いが繰り広げられるに違いない。

2023年FIA F2第12戦ザントフォールト フィーチャーレス表彰台

■2023年FIA F2第12戦ザントフォールト

フィーチャーレース(決勝レース2)暫定結果

Pos. No. Driver Team Time/Gap

1 21 C.ノバラック トライデント 1h01’36.125

2 3 Z.マロニー ロダン・カーリン 2.183

3 9 J.クロフォード ハイテック・パルスエイト 2.525

4 22 R.フェルシュフォー ファン・アメルスフォールト・レーシング 3.197

5 1 D.ハウガー MPモータースポーツ 11.695

6 10 I.ハジャル ハイテック・パルスエイト 13.706

7 4 E.フィッティパルディ ロダン・カーリン 17.646

8 15 A.コルデール インビクタ・ビルトゥジ・レーシング 20.586

9 6 V.マルタンス ARTグランプリ 20.879

10 23 J.コレア ファン・アメルスフォールト・レーシング 23.032

11 20 R.スタネ トライデント 33.147

12 16 R.ニッサニー PHMレーシング・バイ・チャロウズ 34.673

13 11 岩佐歩夢 ダムス 37.644

14 12 A.ルクレール ダムス 39.464

15 17 J.メイソン PHMレーシング・バイ・チャロウズ 45.146

16 25 R.ボシュング カンポス・レーシング 45.548

17 2 J.ダルバラ MPモータースポーツ 47.377

18 24 K.マイニ カンポス・レーシング 1’17.127

– 8 O.ベアマン プレマ・レーシング DNF

– 7 F.ベスティ プレマ・レーシング DNF

– 5 T.プルシェール ARTグランプリ DNF

– 14 J.ドゥーハン インビクタ・ビルトゥジ・レーシング DNS

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