「恵みの夏」塩作り延長 伝統の揚浜式、10月末まで珠洲、道の駅・塩田村

塩田に海水をまく「浜士」=珠洲市清水町の道の駅「すず塩田村」

  ●好天続き生産好調

 今夏の記録的な猛暑で、珠洲市など奥能登沿岸で行われている伝統の「揚浜式(あげはましき)」による塩作りの生産量が伸びている。ここ数年、天候不順に見舞われていたが、今年は夏の強い日差しが続き順調に推移。同市清水町の道の駅「すず塩田村」はさらに増産しようと、2006年のオープン以来初めて、通常10月上旬に終える作業を10月末まで延ばすことを決めた。暑さにうんざりする人が多い中、製塩にとって「恵みの夏」になればと関係者は祈る思いで空を見上げている。

 揚浜式製塩は塩田の砂に海水をまき、日光と地熱で蒸発させて塩を取り出す伝統的な技法で、4~10月の生産期間中、気温が高い夏場に最も多く塩が採れる。

 道の駅によると、10年前は年間9トンの塩を生産していたが、近年は天候不順で6トン前後にとどまる。特に昨年は8月に降雨が続き、屋外での作業が大幅に制限された。今年3月には初めて、道の駅で販売する塩が在庫切れになった。春先からは、作った塩を間を置かずに店頭に並べている状況だという。

 塩田はしっかり乾いた状態でなければ塩作りができない。今年は5、6月に雨の影響で生産量が少なかった一方、7月に入ると珠洲の月平均気温が観測史上2番目に高い25.8度を記録するなど好天が続いた。梅雨明けが発表された7月21日からの1カ月間で比較すると前年の2倍となる900キロ超の塩ができ、神谷健司駅長は「年間ベースで前年並みに持ち直してきた」と手応えを語る。

 気象庁の長期予報では、9月から11月にかけての3カ月間も全国的に暖かい空気に覆われやすく、石川県も、気温が平年より高い傾向が予想されている。

 9月以降、厳しい残暑が続く見通しで、道の駅は暑さが続くうちに塩のストックを増やそうと、塩作りに携わる「浜士(はまじ)」が塩田で作業する稼働日の延長を決めた。神谷駅長は「われわれの製塩法は天候次第。伝統技法がこれからも続くよう、なんとか晴れの日が続いてもらいたい」と話している。

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