【角田裕毅F1第14戦分析】状況を見て的確に下した1周目のピットインと「後悔はしていない」と振り返るステイアウト

 今年のF1第14戦オランダGPは、スタート直後に雨が降り始めるという波乱の展開で幕を開けた。その雨を味方につけたひとりが角田裕毅とアルファタウリだった。

 スタート直後の3コーナーで、1つポジションを落として18番手で通過して行った角田は、雨脚が強くなった1周目の後半に、ピットインを決断。セルジオ・ペレス(レッドブル)、シャルル・ルクレール(フェラーリ)、ピエール・ガスリー(アルピーヌ)、周冠宇(アルファロメオ)に続いて、1周目にピットロードへ向かった。

2023年F1第14戦オランダGP ピットロードへ向かう角田裕毅(アルファタウリ)

「雨が降ってきたとき、雨雲の状況を見て、すぐに路面が乾かないだろうと判断して、自分からピットインすると伝えました」

 この早めにピットインが功を奏して、大きくジャンプアップ。4周目には8番手を走行していた。

2023年F1第14戦オランダGP 角田裕毅(アルファタウリ)

 その後、路面が乾いてソフトタイヤに履き替えた後も、角田はトップ10内を走行する。レース中盤には、フロントロウからスタートしながら、雨の影響で後方に下がっていたランド・ノリス(マクラーレン)から激しい追い上げを食らう。ノリスが1秒以内に迫り、ホームストレートでDRSを使用されても、角田は譲らなかった。

「あそこはもう気合いで、走りました」

 その気合いで、角田は10周目に交換したソフトタイヤで最後まで走り切るというギャンブルに出る。

「金曜日のロングランのデータから、チームが判断し、僕もそれに同意しました」と角田。

 これで一時4番手まで浮上した角田だったが、タイヤを履き替えたドライバーたちにあっという間に追いつかれ、次々とオーバーテイクされて、ポイント圏外へと脱落していった。

「新品のソフトタイヤを履くドライバーのペースが想定していた以上に良かった。しょうがないです。それに同じ戦略を採っても勝てないので、どっちにしても今回はポイントは厳しかったと思うので、特に後悔はしていません」

 同じソフトタイヤで数周に渡って抑え切った角田が、ノリスがピットインする42周目より先にピットインしていたら、どんな結果になっていたのかどうなっていたのかと考えてしまう。

 しかし、「ステイアウトする」という決定は、角田が自身のレースエンジニアとしっかりとコミュニケーションをとって下したもの。結果には結び付かなかったが、ダニエル・リカルドから学んだことを今回も実践できたことは今後に向けてポジティブだろう。

 なお、予選に続いてレースでもジョージ・ラッセル(メルセデス)のバトルで角田はペナルティを受けた。

「ポジションを守ろうとして、ブレーキングで少しアンダーステアが出してぶつかったので、今回に関しては、すごく厳しい裁定というわけではないと思っています」と角田は裁定を受け入れていた。

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