世界遺産の保全と継承訴え遠泳 フランス在住ジャックさんら 長崎・端島から高浜まで7キロ泳ぎ切る

約7キロ先の高浜海水浴場を目指して泳ぐジャックさん=長崎市端島沖

 2015年、世界文化遺産に登録された長崎県長崎市の端島(軍艦島)の保全と次世代への継承を訴えようと、フランス在住のジャック・テュゼさん(59)らが27日、端島から同市高浜町の高浜海水浴場まで約7キロの遠泳に挑戦した。約2時間かけて泳ぎ切り、達成感に満ちた笑顔を見せた。
 ジャックさんはフランスの国鉄で働く傍ら、オープンウオーターとライフセービング競技の指導者として活躍。5歳の時、自宅近くの海で水泳を始め、これまで400回以上、世界各地を遠泳で横断。「海は水のように自由。自然を一番感じることができる場所」と魅力を語る。
 朽ち果てていく世界文化遺産の保全を訴えるため、フランス・パリのセーヌ川など世界文化遺産の近くで遠泳をするプロジェクトを06年から始めた。日本での遠泳は今回が初めて。
 世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」の構成資産の一つ、端島での遠泳を決めたのは17年。しかし、新型コロナ禍などの影響で延期していた。
 27日、プロジェクトに賛同するフランス在住のフラワーアーティストでウインタースイミング選手、窪田龍策さん(54)も一緒に遠泳。NPO法人「軍艦島を世界遺産にする会」の坂本道徳理事長や地元の漁業関係者らが伴走船を出すなどして協力した。
 同日午前9時、ジャックさんと窪田さんは端島から約60メートル離れた海上を出発。途中でクラゲの大群に遭遇しながらも、ウエットスーツや足ひれを身に着けずにクロールで泳ぎ続けた。午前10時50分、ジャックさんの妻、ファビエンヌさん(54)が高浜海水浴場で見守る中、笑顔でゴールした。
 ジャックさんは「潮流が速いと聞いていたが、波も少なく、コンディションが良かった。一生の思い出になる」と話し、窪田さんは「9月に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会による保全状況の審査があるので、メッセージを込めて泳いだ」と語った。

端島から高浜海水浴場まで泳ぎ切り喜ぶ(右から)ジャックさん、ファビエンヌさん、窪田さん=長崎市

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