学校の存続をかけて… 全国募集で生徒争奪戦!?見学ツアーで魅力PR「サルもキジもシカもいます」

少子化を背景に、愛媛の県立高校の中にも、学校存続に向け生徒を全国募集しているところがあります。県外の中学生を対象にした学校見学ツアーに密着、学校の生き残りをかけた「おもてなし」は、果たして届くのでしょうか?

愛媛県内子町にある県立内子高校小田分校に到着した1台のバス。乗っていたのは、県外からやってきた5人の女子中学生とその保護者です。

彼女たちは愛媛の高校への進学を検討していて、今回、県教育委員会が実施した見学ツアーに参加しました。

愛知から参加 瀬川みなみさん 「お兄ちゃんがこの学校に通っていて、色々なことを体験して楽しいと聞いていて、自然が多くて少人数だと人との関わりも多いかなと思い、気になったので来ました」

神奈川から参加 井上実紗妃さん 「進学先を2校で迷っていて、来て授業を受けてみたいなと思って。学校の雰囲気とか全部知ってから決めたいと思ったので」

愛媛県教育委員会では、少子化を背景に、2019年度から希望する県立高校を対象に生徒の全国募集を開始。当初は8校でしたが、現在13校が手を挙げています。

このうち、地元の自治体も生徒募集を支援する7校について、2021年から無料の見学ツアーを企画したところ、入学者が大きく増加。今年度もツアー開始前の1.5倍、88人が県外から進学しました。

小田分校も、全校生徒72人のうち26人が愛媛県外の出身です。

独自の授業、全校生徒が部活動に所属「学校見学ツアー」

ツアーに参加した中学生は、同じく入学を検討する愛媛県内の子どもたちと学校の特徴などについて説明を受けたあと、独自の授業「起業家教育プログラム」を体験しました。このプロフラムは、問題を発掘し解決したり創造性を養ったりと、企業家的な資質を育もうというもので、体験では在校生と学校でのイベントを考えました。

神奈川からやってきた井上さんたちのグループは、男の子の発言をきっかけに、ピザづくりの企画を進めることに。

神奈川から参加 井上実紗妃さん 「学校全体を使って歩かないとピザがつくれない。具材を集められないというのは?」

井上さんらも積極的に提案して企画を練り上げ、プレゼンに臨みました。

ほかのグループからも、人間すごろくや雪玉ドッジボールなど、ユニークなイベントが提案されていました。

続いて、校内を巡りながら部活動を訪ねました。小田分校の生徒はみんな、どこかのクラブに所属しているそう。在校生たちは早速、熱烈にPRしていました。

完成したばかりの女子寮

そして向かったのは、愛媛県外や県内の遠隔地から進学した生徒が暮らす寮です。

見学したのは、この春、完成したばかりの女子寮。来年、入寮する女子生徒は漏れなくこちらで暮らせるそうです。

施設をチェックした後、催されたのは座談会。

兵庫から参加 田中瑠那さん 「門限は何時ですか?」 寮生 「7時半だけど、近くでどこも回るところはない(笑)」 大阪から参加 伊達彩乃さん 「寮の決まりはありますか?」 寮生 「ほとんどない!あまりよろしくないけど、オールでも怒られない。次の日がしんどくなるけど(笑)」

寮生から生の声が聞けました。小田分校や寮生活の一端に触れて、中学生は…

北海道から参加 前野里奈さん 「授業も楽しそうだし寮もすごくきれいなので、来てみたいなと思いました」

一方、学校のある地域は自然も豊かです。

内子高校小田分校の教諭 「地域にはサルもキジもウサギもシカもいます」

全国募集にかける思い

愛媛県教委によりますと、この夏の見学ツアーには合わせて約50人の子どもたちが参加したということです。

小田分校 魅力化推進室長 中島健二教諭 「地元の人にも、何とか高校を存続させたいという思いを持っている人が非常に多いので、そういう人たちと協力しながら学校の魅力を広めています」

存続の危機にある学校は、県内のみならず全国にも増え続けていて「地域みらい留学」というサイトには、愛媛の7校も含め100校以上が登録されています。

生徒の争奪戦は激しさを増す一方ですが、教育の多様化が進む中、ピンチはチャンスでもありそうです。このツアーは秋にも予定されています。

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