城崎の湯×歴史ある酒蔵=「ゆっ蔵」くつろいで 酒販店の16代目店主が1棟貸しの宿オープン 豊岡

蔵を改装した一棟貸しの宿泊施設「ゆっ蔵」=豊岡市城崎町今津

 酒販店のいなばや酒店(兵庫県豊岡市城崎町今津)が、同市の城崎温泉にある店主の自宅の蔵を改装し、1棟貸しの宿「ゆっ蔵」をオープンさせた。同店16代目の細田正平代表(32)は「湯と蔵で、ゆっくり自由に過ごしてもらいたいとの思いを込めた」と話す。(阿部江利)

 ゆっ蔵は2階建てで、バーベキューなどができる専用の庭とシャワー・トイレ、台所、居間を備え、2階が寝室になっている。酒販店の経営資源を生かし、事前に注文があれば、ビールサーバーも用意する。鳥取・因幡地域が創業とも伝わるいなばや酒店。もともと、歴史のある酒蔵だったといい、当時の石積みなども外装に活用した。

 1棟貸しのため、子ども連れで騒がしくなっても、他の宿泊客に気兼ねせずにくつろげるという。細田さんは「多様なニーズに応えられる1棟貸しの宿を、いろんな人に活用してもらいたい」と話す。

 細田さんは車中泊を重ねながら、マイカーで各地を巡った経験がある。趣味が高じて、2021年3月末には車中泊ができるキャンピングカーなどの専用駐車場(12台分)を開いた。合わせて、キャンピングカーを活用したレジャーの普及を図る日本RV協会(横浜市)から「RVパーク」の認定を受けた。

 ところが、RVパークの開設から2週間で、新型コロナウイルス感染症の拡大による緊急事態宣言が発令された。満車だった5月の大型連休の予約はほぼキャンセルされたが、県内客が解約の穴を埋めてくれた。

 コロナ禍が落ち着きつつある今夏は、神戸・阪神間だけでなく、九州や四国など遠方から訪れる人、舞鶴(京都府)発小樽(北海道)行きのフェリーに乗る人の中継利用など、多様なニーズに応えられているという。

 RVパークの利用者らは温泉街を観光するだけでなく、車の横で飲食したり、出前を取ったりとさまざまな過ごし方を楽しんでいる。「RVパークができて、あこがれの城崎温泉に泊まれた」などと喜ぶ声も多く、さらに楽しみ方の幅を広げようと、1棟貸しも始めることにした。

 RVパークの駐車料金は1台3300円で、電源を使う場合は550円増し。蔵は2人までが3万3千円で、3人目以降は1人につき5500円増しとなる。

 いなばや酒店TEL090.8247.5175

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