10代の自殺者が10年で1.4倍、目立つ新学期直後 専門家が示す異変の兆候「気付いたら話を聴いて」 

子どもへの声かけと話をゆっくり聴くことの大切さを強調する竹内志津香理事長=尼崎市内

 兵庫県内の大半の小中高校、特別支援学校で今週、2学期の始業式が開かれる。長い夏休みが終わり、新学期がスタートする時期は、全国的に子どもの自殺が増える傾向にある。県教育委員会などが勉強や人間関係に悩む子どもの相談を受け付けているほか、専門家は「子どもの異変に見て見ぬふりをしないで」と周囲に助言。不登校の経験者は「無理せず、休むのも大事」と呼びかける。

 厚生労働省の人口動態調査によると、2013年~22年の10年間で年間自殺者は5千人近く減少。一方、10代の自殺者数は13年の546人から22年の782人へと約1.4倍に増えている。月別で見ると、新学期が始まる4月や夏休みが終わる8、9月は、10代の自殺者が多くなっている。

 身近な人の異変に気付き、適切な支援へとつなげる「ゲートキーパー」の養成に取り組むNPO法人「ゲートキーパー支援センター」(兵庫県伊丹市)の竹内志津香理事長(64)は「異変に気付いたら声をかけ、適切な支援につなげてほしい」とする。

 相談員としても長年活動してきた竹内理事長は「自死を考えるほど思い詰めている子どもには、必ず何らかの異変がある」と指摘。腹痛や吐き気などの体調不良▽眠れない▽怒りっぽい▽自分を責める発言が増える▽身だしなみや部屋が極端に乱れる-などは要注意のサインとし「気付いた場合は『しんどいの?』など、それとなく声をかけ、ゆっくり話を聴いてあげて」と話す。

 その際に重要とされるのが「否定しないこと、相手を変えようとしないこと」と言う。「何か言いたいことが浮かんでも口を挟まず、『そんなにつらいんだね』『知らなかった、ごめんね』と、とにかく聴いてあげることが大切だ」と竹内理事長。「ただ、家族となるとこれがとても難しい。親は自分でなんとかしようと思わず、スクールカウンセラーや心療内科、相談ダイヤルなどを頼ってほしい」と提案する。

 友人や学校関係者にも同様の手助けができるといい「(相手の異変を)見て見ぬふりをせず、もしかしたら明日いなくなってしまうかもしれない、と思って行動してほしい」と訴える。

 兵庫県や神戸市の教育委員会は、子ども向けの電話相談を受け付けている。また、交流サイト(SNS)などのチャットを通じて相談できる「ひょうごっ子SNS悩み相談」も、毎日午後5~9時に応じている。(勝浦美香)

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