「どうしたら帰れるんだろう」9月1日に警戒区域解除も…宅地整備進まず 熱海土石流 被災者の苦悩

2021年7月、静岡県熱海市伊豆山地区で起きた土石流災害から2年。ようやく9月1日に立ち入り禁止となっている警戒区域が解除となりますが、宅地の整備はまだまだ進んでいないのが現実です。「戻りたいけど、戻れない」。先の見えない不安を抱える住民を取材しました。

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<訓練の様子>
「警察官です。声出せますか」

2021年7月、熱海市伊豆山地区で起きた土砂災害の経験をもとに8月29日、熱海市内で行われた訓練。土砂災害で人が巻き込まれた想定で実施され、シャベルで土砂を取り除く訓練などが行われました。

<坂口将也記者>
「警戒区域の解除を直前に控え、工事が進められていますが、見ての通り、整備されていない土地も多く、まだまだ完全な復旧には時間がかかりそうです」

熱海市によると、現在、112世帯200人が避難生活を強いられていて、年内中に帰還を予定しているのは、わずか13世帯29人。市の用地買収が全体の4割程度しか済んでおらず、必要な工事が進められないことから戻りたくても、戻れない人がいるのが現実です。

小松こづ江さん(73)もその一人です。

<小松こづ江さん>
「ここがうちですので、ここにあたってここが全部崩れた」

土石流で自宅が半壊し、避難生活を余儀なくされました。

<小松こづ江さん>
「戻りたいですよ。本当に」

しかし、警戒区域が解除になる9月1日になっても、小松さんは自宅に戻ることができないといいます。

2023年5月からライフラインの工事が行われていますが、今回の工事で復旧するのは一部のみで、小松さんの自宅周辺はいまだ、電気が使えません。さらに、市が進めている用地買収も難航していて、自宅付近を通る道路の復旧が進まないため、自宅の改修工事を始めることができません。市の担当課に聞くと「道路復旧のめどは立っていない」とコメントしています。

災害から2年以上経っても、復旧が進んでいない状況に小松さんは不安を漏らします。

<小松こづ江さん>
「どうしたら、私たちは帰れるんだろうなって思いますね…」

市の対応の遅さに住民との溝が深まる中、特に住民が問題視しているのは宅地復旧に対する「補助金制度」です。

以前、市は被災した宅地を一旦、市が買い取り、分譲する方式を住民に示していましたが、被災者自ら宅地を造成し、復旧費用の9割を補助する方式に方針転換。二転三転する市の方針や説明不足の対応に住民の不満が爆発しました。

<被災者>
「実際もっと対話する場があってもよかったと思う。信頼関係がないんですよ。信頼関係がない中でこういう議論を重ねても不信感しかないんですよ。みんな」

こうした声を受け、市は宅地復旧の方針について、9月末を目途に決定するとしています。

いつ、自分の故郷へ戻れるのか…。湯河原で避難生活を送っている小松さんに前を向いて生活できるようにと、家族が言葉を贈りました。

<小松こづ江さん>
「人生って辛いことばかりじゃないんだよって、辛いことの後にやっぱり楽しいことも来るよって、がんばろうって言われました」
Q.家族で支え合いながら?
「それじゃないとやってられないです」

災害から2年、小松さんはいまも自宅に戻れる日を心待ちにしています。

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