Jリーグのシーズン移行への監督たちの意見が公表、賛成意見が多い理由は「夏場の試合の現象」…一方で、降雪地域や学生の扱いの課題も

[写真:©︎CWS Brains, LTD.]

Jリーグは29日、理事会後の記者会見を実施。シーズン移行についての経過報告をした。

Jリーグでは現在の春秋制から秋春制に移行するかどうかの議論が行われており、「フットボール分科会」、「降雪地域分科会」、「事業・マーケティング分科会」、「経営管理分科会」の4つの分科会が、それぞれ3回実施されていた。

シーズン移行すべきか否かの方針を定めるために検討をスタートさせる中、「Jリーグ・日本サッカーが目指すもの」を検討。「アジアで圧倒的なリーグ」になることや経営規模を含めた世界と戦う上での環境構築などが挙げられている。

その中で、今回の会見ではJリーグの監督会議の内容が共有され、8月に全4回、各1時間の会議をオンライン形式で行ったとのこと。57クラブの監督が参加し、各監督からは「フットボール面における監督個人として」の意見をもらったという。

監督の名前を公表しないことで、発言が共有され、33名の監督が会議で発言していた。

多くの意見が出ていた中、賛成の意見が多く出ていた中、監督としての懸念の1つは夏場の試合についてだった。

ある監督は「夏場の試合がサッカーのレベルアップにとって良くないことであるのは間違いないと感じている」とコメント。「逆に3年待たなければならないのか、が個人としての意見」と見解を述べた。また別の監督は「夏場のパフォーマンス低下はもちろん、選手の健康管理も非常に難しくなってきている」と語り、「これから何年も暑さが酷くなっていくのは分かりきっていることであり、そういった意味では少しでも早くシーズン移行をしてもらいたいと思う」とコメントした。

そのほかにも、「夏場の試合に関しては、シーズン移行に関わらず、当該期間の試合を減らすなど、何らかの対応が日強づあと考える」や「夏場の練習と試合の質がかなり落ちている」という声もあがった。

Jリーグも欧州とのデータ比較を発表し、1人あたりの走行距離は、春から夏に向けて下降線をたどり、9月から増えていく状況、ハイインテンシティ走行距離も8月が最も短い状況となり、パフォーマンスの低下が著しいことはデータからも見えている状況だ。

夏場の試合が減ることに賛成という監督たちだが、やはり降雪地域のクラブのことも気になる様子。降雪地域で指揮を執った経験のある監督は「降雪地域のクラブは練習環境の確保が必要ではないか」とし、「問題は試合ではなく練習環境」とコメント。同様に降雪地域のクラブで過去に指揮を執った別の監督は「練習環境の整備を行うことができれば、降雪地域のクラブにとって大きなメリットになる」とコメント。このシーズン移行を機に、降雪地域の環境整備をした方が良いという意見が出ていた。

AFCチャンピオンズリーグ(ACL)は今シーズンから秋春制に変わり、Jリーグのクラブはシーズンを跨いで参加することに。また、これまでも問題となっているヨーロッパの移籍市場のタイミングがシーズン途中に起こり、有望な選手の引き抜きだけでなく、それによる下部リーグのチームへの玉突き移籍の問題も起こっている状況。監督たちは、その点でもシーズン移行には賛成であるという声が多かった。

降雪地域の問題と共にもう1つ大きな課題は学生の扱いだ。日本では4月から3月という年度の方式をとっており、卒業は3月、入学は4月という状況だ。

高校、大学を卒業後に入団する選手は、新シーズンの開幕から参加できているのが現状だが、仮にシーズン移行をした場合は、夏に加入することで所属の学校に大きな影響が出てしまい、高校3年次に加入すると、夏まで公式戦に出場できないという状況に。そのための整備や特例などを設ける必要もあるのではないかという意見も出ていた。

シーズン移行に関する議論はこの先も続いていくが、目指すべきは日本サッカーが世界で戦えるために必要かどうか。様々な面でメリットとデメリットが生まれる中で、どういった方向に向かっていくのか注目だ。

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