“昭和の大衆食堂”8月末で閉店 夫婦むつまじく50年 常連「これからどうすれば...」 塩谷の「松川食堂」

惜しまれつつ今月末で閉店する松川食堂の松川夫妻

 栃木県塩谷町玉生の中心街で、なじみの味として親しまれてきた「松川食堂」が8月末で50年間の営業に幕を閉じる。夫婦むつまじく店を切り盛りし、地域の人々に支えられてきた“昭和の大衆食堂”。閉店を惜しむ声が上がる中、店主の松川勝明(まつかわかつあき)さん(80)は「お客に恵まれた。感謝しかない」と話している。

 松川食堂は、松川さんが脱サラし1973年、妻幸子(ゆきこ)さん(78)と自宅で始めた。喫茶店を兼ね、パフェも出す店だったという。

 出前が主で、ピーク時は昼だけで15~20件の注文を受けた。周辺の縫製工場、町役場、農協などのほか、田植え、稲刈りシーズンは家族総出の田んぼにも届けてきた。

 元郵便局を改築した現在の建物に移った99年ごろからは団体の宴会、老人会の会合などの需要に応えた。

 メニューは時代とともに変化。丼物、ラーメンなど単品から、今ではセットものが中心に。高齢者らの要望に応えて「半チャーハン+半ラーメン」も作った。

 新型コロナウイルス禍で客は減ったという。松川さんは年齢も考慮して80歳の誕生日を迎えた今月まででの閉店を決めた。後継者はいない。

 近くの男性(78)は「子どもが帰郷時、出前を頼める店がなくなる」、常連の女性(92)は「これからどうすればいいか」など惜しむ声が絶えない。町消防団第3分団からは「感謝状」が贈られた。

 松川さん夫妻は「地域の人に助けられた。うちの方こそ感謝しなくちゃならないのにありがたい」と柔和な表情で語った。

惜しまれつつ今月末で閉店する松川食堂の松川夫妻

© 株式会社下野新聞社