地域融和象徴の獅子舞休止へ 砺波、小矢部市下中の上村

今年の演舞で休止となった上村の獅子舞=小矢部市下中

 砺波、小矢部両市境近くにある神社の秋祭りとして長年受け継がれてきた伝統の獅子舞の一つが29日、今年の演舞で休止となった。少子化と若者流出の影響で担い手が減り、現状では続けられなくなったため。自治体の枠を超えて、「地域融和の象徴」の存在だった獅子舞文化。今年で一区切りとなるだけに、若衆連中は熱がこもった演舞を繰り広げ、住民らは思い出に残そうと目に焼き付けた。

 休止するのは、砺波市下中と小矢部市下中に伝わる獅子舞の一つで、上村(かむら)の獅子舞。

 関係者によると、旧若林村の獅子舞として長年の伝統があり、1957(昭和32)年9月に旧西礪波郡若林村の一部が砺波市に編入し、砺波市下中と小矢部市下中と分かれて以降も行われてきた。一時中断した時期は不明ながら、50年ほど前に一度復活。その後、何度か休止した年もあったが、神社の修復と獅子頭の修繕を記念して約40年前に再度復活して以降、毎年8月29日の秋祭りで演舞を続けてきた。

 上村は現在、約40世帯弱で少子高齢化が進み、獅子舞の担い手である小中学生や青壮年層の数が減った。若衆連中からの申し出で、やむなく今年で獅子舞を無期限で休止することになった。住宅団地ができて約80世帯の下村(しもむら)は今後も継続する。

 住民によると、地域では普段、校区ごとで行事が行われることが多いため、行政区域が異なり、両市にまたがる氏子らにとっては「獅子舞が唯一の交流の場」だったという。

 上村の獅子舞は29日、下中の神社4カ所をはじめ、結婚など慶事があった民家、企業など十数カ所を回り、新型コロナウイルス前から4年ぶりとなる勇壮な演舞を繰り広げた。砺波市出町中2年の吉江敦志さん(14)は「住民が増え、また復活できるとうれしい」と期待し、小矢部市大谷小3年の深田昇佑君(8)は「また機会があれば獅子舞をやりたい」と話した。

 約40年前、獅子舞復活に尽力した前田義雄さん(79)=小矢部市下中=は獅子舞の休止について「残念。若い人が増えてぜひ復活してほしい」と名残惜しそう。

 上村獅子舞若連中で砺波代表の吉江智晴さん(49)は「砺波と小矢部の住民が交流する融和の象徴だったので、一区切りとなる演舞に子どもも大人も練習の時から熱が入っていた」と振り返った。神社の演舞を終えた小矢部代表の津川茂樹さん(57)は「感無量。氏子の皆さんと一緒に祭りを祝えたことが最高の幸せ」と充実した表情を見せた。

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